戦っていると、ギャアアアアという物凄い断末魔と共に車両が飛び跳ねるように唸る。


…!!

車両が横転しそうになる。


嫌な空気を感じ取って、唸る車両をなんとか飛び跳ね隣の車両の善逸と禰豆子ちゃんの様子を見に行く。


案の定だ。


善逸が車両の外に投げ飛ばされそうになっている。
禰豆子ちゃんと子供を庇うように抱き抱えるのが見えた。


「善逸!」


私は窓から思い切り飛び降りて、彼と同じように、皆を抱きとめて身体をぐるりと捻って自分の身体を反転させて、自分が下敷きになるようにする。
誰も離さない。
怪我するのは私一人で十分だ。

そしてそのまま全員分の体重と落下の反動が自身の身体に乗って、意識を失った。







「って、てて…痛いよお、何なのコレぇ…」

重い身体を起こす。
身体の下に何か柔らかいものを感じてゆっくり視線を下に移す。


「…!!」


え、なまえ…?
俺なまえの上に乗ってたの?

禰豆子ちゃんや乗客の人たち全員を守るように下敷きになって、頭から血を流している。


慌てて全員を優しくなまえの上から退かす。


「なまえ!!おい、なまえ!!」


ぺちぺちと頬を軽く叩くが反応しない。
ばくばくと自分の心臓がうるさい。

落ち着け、落ち着け。

なまえの音は?…聞こえる。
弱々しくだがなまえ特有の平坦な音がしてる。

少しほっとするが、それでも油断できない。
あの列車のあの速度で窓から振り落とされ更に全員分の体重も掛かって地面に打ち付けられれば普通死ぬ。
頭を打ってたらなおのこと。


「なまえ!起きろ!!」


ぴく、と手が動いた。


「!」


そしてゆっくりと目蓋が開かれる。


「善逸…?」
「なまえ!!」
「大丈夫…?怪我、してない…?」


なまえがへにゃりと笑って俺の頬に優しく触れる。
その瞬間頭が沸騰しそうな程血が登る。


「馬鹿!!おまっ…俺なんかのことより自分だろ!?何庇ってんだよ!何でいつもいつも…」
「ん、…落ちる寸前に技出して衝撃抑えたよ」


そういうことじゃ、ない…。


「…っ、それより中にいる人救出しないと。それから、煉獄さんに指示を仰ごう…」


刀を杖がわりのようにして震えながら立ち上がる。
何でそこまで、頑張るんだよ。やめろ。


「なまえはそこにいろ!横になって休んでるんだ!!」
「だめだよ、そんなことできない」
「許さない、動くな」
「善逸…」
「中の人の救助は俺がやる。なまえは絶対に動くな」


それだけ言い残して中の人を助けに入る。
なまえは悲しそう音で俺の背中を見ていた。



29 悪夢に終わる
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