旅立ちの日。
きよちゃんすみちゃんなほちゃんたちは泣いて私と炭治郎にくっついた。
可愛いなあと顔が綻ぶ。
それと同時に申し訳なさと罪悪感が募る。
お達者でーという三人娘の声を背に、炭治郎、善逸、伊之助そして私は次の目的地へ向かう。
「えーっ!?まだ指令来てなかったのかよ!!まだいて良かったんじゃん!!しのぶさん家に!!」
いや治療終わったし…一箇所に止まるより…それに炎柱の煉獄さんに…と話を続ける炭治郎を善逸がぽかぽか叩きながら文句を垂れる。
「善逸、話聞いてた?炭治郎は煉獄さんにお話があるんだって!」
「でもさでもさぁ〜!あんな悲しい別れ方しなくたってよかったじゃん!」
ぽかぽか叩くのをやめさせようと後ろから善逸を抱きしめるようにして押さえつける。
「!!」
「あれ、簡単に止まった」
「な、ななな…」
善逸が真っ赤な顔でわなわなと振り向く。
「〜〜〜っ!!」
善逸がゆっくりと手を下ろし、炭治郎を叩くのをようやくやめた。
「善逸どうしたの?」
「なんでもないっ!!」
何か怒らせたようだ。
私は首を傾げる。
炭治郎がその様子をニコニコと見ていた。
すると少し先で伊之助がオイ!と私たちを呼び、ふるふると震えていた。
「オイッ!!何だこの生き物はーーー!!!」
目の前に停車しているのは、列車だった。
伊之助は初めて見るのか興奮した様子でこれは土地の主だとか何だとか言っている。
面白いのでそのままにしておいた。
「まずは一番に俺が攻め込む!豆大福、俺について来い!!」
だれが大福だ。一文字もかすってないよ。
「私のことだと思うけど、攻め込まないよ…」
「そうだぞ。この土地の守神かもしれないだろ?それに急に攻撃するのも良くない」
炭治郎もズレてる…。
「だから汽車だって言ってるじゃんか。列車分かる?乗り物なの人を運ぶ」
「二人とも初めて見るの?」
「ああ…じゃあ烏が言ってたのがこれか?」
「烏が?」
三人で話していると、伊之助が猪突猛進!と列車に頭突きする。
すると向こうからピピー!と笛を鳴らされ、刀を持ってる!警官を呼べ!と叫ばれ皆で慌てて伊之助を掴んで逃げる。
「政府公認の組織じゃないかな俺たち鬼殺隊。堂々と刀持って歩けないんだよホントは」
「一生懸命頑張ってるのに…」
「仕方ないよ。鬼とか言っても信じてもらえないもん」
「とりあえず刀は背中に隠そう」
伊之助は背中に隠しても裸なので丸見えであった。
「"無限列車"っていうのに乗れば煉獄さんと会えるはずなんだけど…すでに乗り込んだるらしい」
「じゃあ切符買ってくるから静かにしてるんだぞ。なまえ、ちゃんと見張っとけよ!」
「うん、わかった」
珍しく善逸が頼りになる。まあこの二人は山奥に住んでいたらしいから仕方ないか。
すぐに善逸が切符を買ってきてくれて、早速列車の中に乗り込む。
伊之助はうおお!腹の中だ!と興奮が冷めやらない様子ではしゃいでいた。
「柱だっけ?その煉獄さん。顔とか分かるのか?」
「うん。派手な色の髪だったし、匂いも覚えてるから大分近付いてきて…」
うまい!!と大声が急に聞こえて私たちはびっくりしてその声の方を凝視する。
そしてそろりそろりと近付いていく。
その間にもうまい!うまい!とずっと大きな声が聞こえている。
すぐ近くまで行くと、煉獄さんという人の周りには空になった弁当箱が山積みになっていて、列車の人がひっきりなしにそれを片付けていた。
「…あの人が炎柱?」
「うん…」
「ただの食いしん坊じゃなくて?」
「うん…」
善逸が何度も炭治郎に確認する。
その気持ちはちょっと分かる。
でも…空気が違う気がする。
「変わった人なんだね、煉獄さんって」
炭治郎が意を決して煉獄さんに話しかける。
「あの…すみません…れ、煉獄さん」
「うまい!!」
「あ、もうそれはすごく分かりました…」
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25 出発!