少ししょんぼりしながら、とにかく屋敷の女の子たちにお礼を言いに行く為に空気を読む。
するとすぐ近く…庭にアオイちゃんがいることがわかった。
「アオイちゃん!」
「… なまえさん、どうかしたんですか?」
アオイちゃんは布団をテキパキと取り込んでいる最中だった。
「もうすぐここを発つから、善逸がたくさん迷惑かけたしお礼を言いに…」
「お礼など結構です。選別でも運良く生き残っただけその後は恐ろしくなって戦いに行けなくなった腰抜けなので」
その言葉は自嘲気味だった。
私はアオイちゃんの手を取り、首を振って見つめる。
「…腰抜けなんかじゃないよ。アオイちゃんのおかげで私たち少し強くなれたし、アオイちゃんがこの屋敷のこと色々取り仕切ってくれるから心地良く過ごせた。私ここで過ごせて本当に良かった。ありがとう」
それじゃあ、と私はアオイちゃんに手を振る。
「…次帰ってくる時は、善逸さんをもっとしつけて帰ってきてくださいね。…あの人大変ですから」
「ふふ…わかった」
アオイちゃんは照れ臭そうにこちらを見ずに言う。
可愛らしくてつい、笑ってしまいそうになる。
努力はするよ、アオイちゃん。
そしの足で庭の裏に回ると縁側にカナヲちゃんが座っていた。
「カナヲちゃん!」
私はすとんとカナヲちゃんの横に腰掛けた。
その様子をカナヲちゃんは何も言わずに見ていた。
「さっき…炭治郎が…」
「炭治郎?」
珍しくカナヲちゃんが話してくれた。
少し驚いたけど、嬉しかった。
「自分の心の声をよく聞けって…」
「心の、声…」
少し放心状態だった。
炭治郎の言葉は、行動は、いつも誰かを動かす。
そういう空気の人間だから。
…きっとカナヲちゃんも動かされたんだろう。
「…簡単なことじゃないよね…。本当の心の声って、自分でもとても分かりにくいもんね。私もわからなくなるし間違える時もあるよ」
しっかり心の声が聞こえているような炭治郎と違って、それは普通の人間には難しいこと。
「私の心の声はね、カナヲちゃんと仲良くなりたいって言ってるんだ」
「…え…」
「カナヲ、って呼んでもいいかな」
カナヲちゃんが、戸惑い気味にこくりと頬を染めて頷いた。
私は彼女の手を取って笑う。
「ありがとう。またね、カナヲ!」
「…!また、ね」
そして私はカナヲに手を振る。
嬉しい。唯一の女の子の同期。…もっと仲良くなったら友達になってくれるだろうか。
私は柄にもなく浮かれて、自室へと戻った。
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24 お世話になりました