次の日から、善逸と伊之助もまた機能回復訓練に復帰した。

私と炭治郎は二人で全集中を続けるコツを伝えようとするが上手く伝えられない。
炭治郎に至っては面白いくらい酷い教え方だった。


「炭治郎くんとなまえさんが会得しようとしているのは全集中・常中という技です。全集中の呼吸を四六時中やることにより基礎体力が飛躍的に上がります」

いつの間にか私と炭治郎の後ろにふわりとやって来ていたしのぶさんが、説明してくれる。
気配がなかった…さすが柱。


「これはまぁ基本の技というか初歩的な技術ですので出来て当然ですけれども、会得するには相当な努力が必要ですよね。…まぁ出来て当然ですけれども。出来ないなら仕方ないです。しょうがないしょうがない」

こうして伊之助には闘争心に火をつけ…。

「頑張ってください善逸くん!一番応援してます」

と手を握って善逸を大奮起させた。
しのぶさん、人の扱いを心得ている…!
さすが柱…。


そして皆で頑張っているうちに反射訓練、全身訓練共にカナヲちゃんにも勝てるようになって。



どん!と置かれたひょうたんに全員で吹く。


「がんばれがんばれがんばれ!!」


きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんが応援してくれる。


思い切り肺を大きく意識して…。


バリン!!と四人のひょうたんが一斉に割れた。


皆でわーいわーいと喜ぶ。
頑張ってきたことは無駄じゃなかった。

それにしても善逸と伊之助は後から復帰したのに凄いなあ。
やっぱり私なんかとは違うなあ、と少し悔しく思う。







「え?もう行くの?」

善逸がどこからかくすねてきたおまんじゅうを食べながら、炭治郎に聞き直した。


「ああ、父が使っていた"ヒノカミ神楽"について煉獄さんという炎柱の人が知っているかもしれないからその人の所に行こうと思って」
「そっか、私もまだ任務決まってないし一緒に行ってもいいかな?」
「もちろんだ!」


ここを去る前に、お世話になった皆に挨拶しないと。
アオイちゃんやきよちゃんすみちゃんなほちゃん達を探す。


ふと廊下の角から誰かの空気を感じる。
私はぶつからないように少し止まる。


その人物はスッと出てきた。
同い年かちょっと上くらいの男の子だ。

この蝶屋敷で中々見ない顔だな?と思っていると空気で気が付く。
とても良い体格をしているので一瞬気が付かなかったが、最終選別で女の子に手を挙げた子だ。
短期間で体型が物凄く変わってる。
驚いて慌てて呼び止める。


「ねえ!」
「!?」

男の子はびっくりした顔をして振り返った。


「私みょうじなまえ。最終選別で会ったよね?同期だよ。久しぶり、すごく大きくなったね」


近くに寄って見上げる。
見れば見るほど、最終選別の時とは全然違うなあ。


「…?」


男の子が何の反応も示さない。


「大丈夫?具合悪い?」


私が触れようとすると、男の子の顔が一気に赤く染まっていって、そのままスタスタと廊下の奥へ消えてしまった。


…嫌われてるのかな、私。



22 全集中・常中
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