「「ひょうたんを吹く?」」


炭治郎と二人でおにぎりを食べながらきよちゃんすみちゃんなほちゃんのお話を聞く。


「そうです。カナヲ様に稽古をつける時しのぶ様はよくひょうたんを吹かせていました」
「へぇー面白い訓練だね音が鳴ったりするのかな?」
「いいえ、吹いてひょうたんを破裂させていました」
「へぇー」


んぐっ!?
私は思わずおにぎりが詰まりそうになった。
何?!は、破裂!?


「えっこれを?この硬いの?」
「はい、しかもこのひょうたんは特殊ですから通常のひょうたんよりも硬いです!」
「え…」


私の表情が絶望に染まる。
ひょうたんを、吹いて、破裂…?
できるの!?私とそう体格変わらないあの可愛らしい女の子が!?


「今カナヲ様が吹いてるのはこのひょうたんです」


どん、と取り出したのは座ったきよちゃん達と同じくらいの大きさのひょうたんだった。
私は思わず頭がくらりとした。



これは…相当頑張らないとできない…。



そして炭治郎と特訓がまた始まった。
寝ている間、全集中の呼吸をやめたら布団叩きで起こしてもらったり、とにかく常に全集中を心がけながら特訓を繰り返した。







最近のなまえは炭治郎とばかり一緒にいる。
ていうか一緒に特訓しているようだから当たり前なのかもしれないけど。

何でなまえはこんなに頑張れるんだろう。
炭治郎は禰豆子ちゃんを鬼から人間に戻すという目標があるからっていうのは分かるけど…。


なんか面白くない。
夜、禰豆子ちゃんをお花畑に連れて行ってあげたり、しのぶさんの部屋にある金魚鉢を見せてあげててもなまえが気になってしょうがない。


今頃何をしてるんだろう。


炭治郎と一緒にいるんだろうか。
それとも一人で鍛錬中?
どちらにしても気が気じゃなかった。


「む?」
「ごめんね、禰豆子ちゃぁん…ちょっと俺行かないと行けないところが」
「む!」


禰豆子ちゃんは嬉しそうに箱の中へと入って行ってしまった。


俺は立ち上がって禰豆子ちゃんの部屋( なまえの部屋でもあるが)を出る。

そして、なまえの平坦な音を探して屋敷を歩き回る。
廊下や俺たちの部屋、そして縁側…。


そこに黄色いリボンをつけた黒髪の後ろ姿を見つけた。
俺はこっそり音を立てずに近付く。
するとなまえはぴくりと動いて「善逸」と振り向きもせずに俺の名前を呼んだ。


「善逸でしょ、どうしたの」


俺は何となく心地の悪さを感じながらなまえの横に座る。


「最近…頑張ってるから」
「うん」
「何でそこまで頑張れるのかと思って…」


なまえを横から盗み見る。
その姿は少し嬉しそうに見えた。
少し間が空いて、なまえは小さな唇を開く。


「善逸に近付けると思って」
「…?」


俺は、たまになまえが言うことを理解できない。
なまえは俺の隣に立つ資格がないようなことを言う。
資格がないのは俺の方だ。

俺は弱いしすぐ逃げ出すし根性無いし。
なのになまえは全く反対のことを言う。

俺に追いつく為、隣に立って生きる為といつも頑張る。


「善逸」


なまえが僅かに微笑んで、俺の手に触れる。
俺は思わずびくりと手を強張らせた。
それに気付いたなまえが少し寂しそうな音を出してゆっくりと手を離した。


「頑張るね、私」


なまえは微笑んだまま、決意を俺に告げる。

まただ。
逃げられてしまう。嫌だ。
今度は俺から、なまえの手に触れた。
なまえは驚いてほんのり頬を染めて俺を見る。


「…俺も、」


しっかりとなまえの手を握った。
なまえも躊躇いがちに指を絡めてきた。
心臓がばくばくと音を立てる。自分の心臓の音が煩くてなまえの音が聞こえない。


「…頑張る」
「うん」


二人で月を見上げた。



21 鍛錬!
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