「雷の呼吸 弐ノ型…稲魂!!」


ぴかりと稲妻が走った。
それがとても綺麗に思えて、ぐらりと目線がゆっくり地面へ近づきことりと落ちてもその少女の姿を眺めていた。





『お母さん、このお話、難しいねえ』


お母さんはふわりと笑って私の頭を撫でた。


『貴方はこの本が好きね』
『難しくてわからないけど、なんだか優しいお話だもん』



王子さまの世界にはたった一輪だけのバラが咲いている。
ある日王子さまはバラと喧嘩して他の世界へ旅立つの。
そこには色んな人がいて、色んな考えがあって。

王子さまはある時やってきた場所でたくさんのバラが咲いているのを見つけたの。
王子さまの世界に咲いたたった一本のバラはとても特別なものだと思っていた王子さまは衝撃的だった。
でも、あるときキツネに教えられる。
僕はたくさんいる中でたった一匹のキツネで、君もまたたくさんいる人間の中のたった一人なのだと。
でも僕が君になついたら、君は僕の特別になる。

その言葉を聞いた王子さまは、自分の世界に咲いたバラがたった一輪のとても大切で愛おしいものだと気付いた。





そして私は思う。
今、目の前にいる黄色い羽織りの女の子はたくさんいる人間の中の一人でしかない。


鬼となり…累の家族となってから、忘れていた。



私にとっての、たった一輪のバラ。



ねえ、貴方にとってのバラは、誰?



あなたにとってのバラは誰?
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