…ぐるぐる巻きにされた。
何やらテキパキ後始末している黒ずくめの人と、最終選別にいた女の子。
…そういえば、さっきなまえが居たような気がするんだけどどこに行ったのだろう。
誰か知っているだろうか。
「すみません、あの!」
近くを通った隠と書かれた人に声を掛ける。
「…ん?何だ?」
「あの…俺と同じ…三角模様に黄色い羽織りを着た黒髪の女の子…見ませんでしたか」
「ああ…見たよ、確か君がいた小屋の下の鬼を全部一人で倒してたなあ」
「一人で!?」
「強い奴じゃなかったみたいだけど…疲労と、あとかなり怪我もしてたから先に運んだよ」
ほっとして、空を仰いで脱力する。
そう言えばなまえは何か言っていなかったか?
『善逸…好きだよ…』
!!?!?!!
待って、なまえそんなこと言ってなかったか!?
えーーーーーっ!?!?
会ったらどんな顔すればいいの!?
っていうかアレ夢じゃないよねえ!ねえ!?
▽
「善逸!生きてて良かった」
なまえはびっくりするくらい普段通りだった。
やっぱりあの告白は幻聴?俺の願望?
だとしたら痛い奴すぎない!?
俺のベッド脇から離れないなまえに、二つ結びの女の子が不機嫌そうにしている。
「あなた自身も重症なんですからね!下手したら腕が動かなくなってたかもしれないんですよ!」
「ありがとう、アオイちゃん。私は善逸さえ平気なら…」
「じゃあちゃんとこの薬飲むように言ってくださいね!!」
にっがーい薬をなまえに押し付け置いていく。
なまえはほら、と湯呑みを俺に渡そうとする。
俺は悲鳴と共に嫌々と首を振る。
「駄目だよ善逸。飲まないと元に戻れないよ」
なまえがニコニコと湯呑みを近付ける。
イィヤァアアアア!!と叫べばまたあの女の子が来て叱られた。
「なまえは本当に善逸が大事なんだな!」
「…うん。あ、もちろん炭治郎や伊之助も大切だよ」
すん、と炭治郎が匂いを嗅いだ。
するとぱーっと嬉しそうに笑って、そうか!と何度も頷いていた。
「ところで伊之助…大丈夫?」
「ああ、伊之助は…」
「ゴメンネ、ヨワグッデ…」
「…」
俺と炭治郎でそんなことない!スゲェよ!と励ます。
それをなまえは目を丸くして見ていた。
俺と目が合うと、なまえはいつもと変わらない表情で小さく首を傾げた。
好きだよというなまえの言葉を思い出してどくどくと心臓が高鳴る。
慌てて何か間を持たせようと思ってリボンのことを思い出す。
「あっ!こ、こここれ。なまえのリボン!」
「持っててくれて嬉しかったよ、ありがとうね」
なまえは俺から優しくリボンを受け取ると、手慣れた手つきで髪を結ぶ。
「これ見て… なまえのこと思い出して死ねないって思った」
「そっか。良かった」
なまえは笑う。
あれ、なまえってこんなによく笑ったっけ。
「じゃあ、そろそろ飲もうか?薬」
「…あっ…」
この後俺の叫び声が蝶屋敷にこだました。
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18 ぐるぐる