そして早朝、私は藤の花の家紋の家を発った。
炭治郎だけ起きてきて見送りをしてくれた。
他の二人は起こしても起きなかったそうで、炭治郎は非常に怒っていた。
私が気にしてないと笑うと、炭治郎は申し訳なさそうな顔をする。
炭治郎、何も悪くないのに気を遣わせてごめん。

そして炭治郎に見送られながら私は那田蜘蛛山の麓の村へ任務に向かった。



休憩を挟みながらどれほど歩いたか分からないが、任務先の村についたのは日が暮れてからのことだった。

村の人から話を聞くと、子供たちが消えているのだと教えてくれた。
自身も子供がいなくなったというご家族が、親切にも今日は遅いから泊まって行けと言ってくれたのでお言葉に甘えて明日の朝から捜査をすることにした。


子供が消える。
それもみんな決まって夕刻…逢魔時に。
鬼の仕業だと思うけれど、何故子供だけ?

優しい奥さんが敷いてくれた布団に横になると、一日中ほぼ歩きっぱなしだった身体が疲れを訴えていたのかすぐに眠りについてしまった。







朝、目が覚めると私の鎹烏が文を口に加えていた。
送り主は善逸からだった。
任務先が近くの那田蜘蛛山になったらしい。炭治郎や伊之助も一緒に。

いい匂いがしてきて、台所を覗くと奥さんが朝ごはんを作っていたので泊めてもらったご恩返しに朝食作りを手伝った。
食べていけと言う奥さんと旦那さんに、申し訳なくて頂けないと言うと、仕事なら力つけて私たちの子供を見つけてきてと優しくお願いされ、朝食を有り難く頂いた。



そして私は朝から捜査を開始した。

村にいる人からの情報を聞いたり、鬼の空気の跡を追ったり。
村の裏手に那田蜘蛛山へ入れる山道があり、そこに鬼の空気を感じた。


「お姉ちゃん、何してるの?」
「…!」


振り向くと、7〜8歳の女の子が立っていた。


「この村で子供が消えてる事件の調査をしてるんだよ」
「!」


言わない方が良かったかもしれない。
怖がらせてしまったようで、女の子は目に涙を溜めていた。


「お友達がね、消えちゃったの」
「…消えたところ、見たの?」
「…ううん、見てないよ。でもね、知らない同じ歳くらいの女の子が夕方来てね」
「うん」
「本を一緒に読んであげるって、私のお友達とこの山の入り口で本を読んでたの。私はお母さんに夕方になったら帰ってきなさいって言われてたから、帰ったの。その子、それからいなくなっちゃったんだって」
「本…」
「シズちゃん、戻ってくる?」
「!…きっと、戻ってくるよ」


この子と同じくらいの歳の女の子が本を読んでそれから消えてしまった。
きっとその子は鬼で、何らかの血鬼術だろう。


「教えてくれてありがとう。今日も早くお家に帰ってお父さんとお母さんを安心させてあげてね」
「うん」


教えてくれた女の子は、帰って行った。


いつの間にか夕暮れ時になっていた。
私はもう少しここを調べて見ようと山の入り口に足を踏み入れた。



ふと、空気が変わった。
木々が騒めいて、辺りがうるさくなった。



「お姉ちゃん…お姉ちゃんも本読んでほしいの?それとも、お話聞かせてくれるの?」


木の上に、白い髪の三つ編みの女の子が座っていた。
無表情のまま、口元だけがゆっくりと弧を描いた。



15 消える子供
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