「…骨折も癒えてきたし、身体動かしたいなぁ」


その言葉にいち早く反応したのは伊之助で、すぐに庭に出て剣無しでの手合わせが行われた。

伊之助の攻撃は低いのでかわすのも攻撃するのも骨が折れた。
ていうか本気でかかってくるので本当にまた骨が折れそうになるのですぐにやめて貰った。


次に炭治郎にお願いすると、木刀で実戦的な手合わせになった。
もちろんお互い手加減してやっているが炭治郎は頭を使う戦い方をするのでとてもためになる。



一汗かいて、縁側で汗を拭きながら炭治郎と休憩する。

「炭治郎と戦ってると自分の駄目なところとか出来てないところが分かって楽しいよ」
「俺も勉強になるよ。なまえの攻撃は重くはないけどかなり早いから…」


二人でわいわいと会話していると後ろで伊之助がつまらなそうにしていた。ごめんね、伊之助。

すると頭上で私の鎹烏がカアカアと鳴きながら滑空してきた。


「次ノ任務ダ!村へ行ケ!那田蜘蛛山ノ麓ニアル村ニ行ケェ!」
「私だけかな?」
「ソウダ明日ノ早朝出発シロ!」
「わかった」


カアカアとまた鎹烏は飛んで行った。


「なまえだけもう任務か…」
「私は他の皆よりは軽傷だったからね」

今日は早めに寝て、明日からまた任務だ。
気を引き締めないと。


「皆…特に伊之助はまだ治ってないんだから無理しないでね」
「ああ、なまえも任務頑張れ」
「うん」

炭治郎がにこっと笑う。
私もつられて笑った。







夜、私たちは早めに布団に入って寝た。
朝方ふと目が覚めると、隣に善逸がいなかった。
厠かなと思ったがしばらくしても戻ってくる気配がないので目も覚めてしまったし探すことにした。

しばらく歩き回ると、縁側に見慣れた後ろ姿を見つける。


「善逸」


声をかける前に音で気付いていたのか、善逸は私に驚かなかった。


「どうしたの?目、覚めちゃった?」
「うん…」


善逸は、少し戸惑い気味の瞳を私に向ける。


「善逸?」
「なまえ、また別の任務だな」
「…もしかして、寂しい?」


善逸がばっとこっちを見る。
戸惑っているような顔をして眉をしかめたかと思えば何か決心したような表情に変わって。


…あ、この空気は、何だか…。


どうしよう、と私は視線を彷徨わせる。
その私の様子を善逸は不安そうに見つめる。
善逸のお日様のような綺麗な瞳が、不安の色に染まるのが…たまらなく嫌だ。


「寂しい」


胸が、つまりそうになる。

…違う、違うんだ。
空気を読め。
これは、ずっと一緒だったから寂しいだけだ。


「そっか、私も寂しい!」


精一杯笑って見せる。
善逸の顔を見ないように、自分の懐からいつか善逸がくれた黄色いリボンを取り出す。


「これ、善逸が持ってて」
「…え」
「お願い」


今度は目を逸らさずにしっかり目を見て、善逸の手にリボンを握らせる。


「次いつ会えるか分からないもん…寂しい時、これを見て師範と…私を思い出してね」


善逸はぎゅっとリボンを握りしめて、こくと頷いた。


「善逸も次の任務決まったら文を送ってね。」
「うん」
「…絶対に、死なないで」


出来れば、怪我もしないで。
近くにいなければ、私は善逸の代わりになってあげられないんだから。



13 ぐちゃぐちゃ
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