禰豆子ちゃんが炭治郎の妹さんだと分かってから、善逸は炭治郎にヘコヘコしだしたり禰豆子ちゃんにお花をプレゼントしたりしていた。

私はそれを遠目で見て、少し切なく思う。


好きな人が他の女の子にデレデレしているのを見て落ち込まない子は居ないと思う。


でも私は嫉妬なんてしない。
だって私は…今以上の関係を求めているわけではないから。
私は彼と共に生きたいだけ。
彼が他の人と幸せになる事を望んでいるから。

炭治郎の妹の禰豆子ちゃんがそのお相手なら、私は何の不満もない。


私は善逸が好き。師範が好き。


ただ、それだけのこと。


「善逸」


藤の花の家紋の家での生活も少し慣れて来た。
身体を動かすためにも二人で散歩がてら禰豆子ちゃんにあげるお花を探す。


「なに?」
「禰豆子ちゃん、可愛いよね」
「本当に!鬼なのに何であんなに可愛いんだろうな!」
「ふふ、そうだね」


ふと視線をあげると少し遠くに黄色いお花が咲いていた。


「あ、善逸見て」
「?」
「たんぽぽ!善逸のお花だよ」
「なんで俺の花…?」


私は優しく茎の部分をちぎって、善逸に渡す。


「明るくて優しい色。善逸にぴったり」


善逸は私からたんぽぽを受けって、そのまま優しく私の耳の付け根にたんぽぽを引っ掛ける。


「… なまえの方が、似合ってる」


私は驚いて、善逸の瞳の奥の真意を探ろうと見つめる。
分からない。
空気が、読めない。


「…似合ってる、の?」
「うん」
「ありがと、嬉しいな。善逸の色、好き」


善逸は顔を真っ赤にして、またそういうこと言う、と小さく呟く。
本当のことだよ、と笑う。


「早く禰豆子ちゃんにあげるお花探そう?日が暮れちゃうよ!」
「…うん」





少し日が暮れて帰ると、禰豆子ちゃんはもう起きていた。
善逸が見つけた花を渡すと、禰豆子ちゃんは不思議そうにそれを受け取った。


一部始終を見ていた炭治郎が私の近くに寄ってきて、困った顔をする。


「お兄ちゃん、心配?」
「… なまえは心配じゃないのか?」


鼻が利く炭治郎は、私の気持ちを何となく理解しているようだった。


「善逸の幸せが、私の幸せなんだ」


そう言って笑うと、炭治郎は悲しそうな空気を纏う。
大丈夫だよ、炭治郎。
ちゃんと私幸せだから。


自分でも思うけど、複雑だ。


好き。
近くにいて欲しい。
離れないで欲しい。

けど私じゃなくて他の誰かと幸せになって欲しい。
…でも本当は私と一緒になって欲しい。


善逸に対してはもう自分でも制御できないくらいぐちゃぐちゃだ。



11 たんぽぽの花言葉
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