綺麗に髪をセットして、先生に怒られないギリギリラインの薄めのメイクを施して。
人気モデルがオススメしてた新作の色付きリップを塗って、制服を整える。
最後に全身鏡の前でくるりと一回転。
おかしいところがないか入念にチェックする。
よし!と気合を入れて登校する。
今日も最初に行くのは自分とは違う学科の教室。
「かっちゃん!」
お目当ての相手を見つけると、声を掛ける。
私の声に面倒臭そうに反応して、今日も今日とて華麗にスルー。
「ねえ、かっちゃん。今日の私いつもと違うと思わない?ねえ、ほら!」
顔をずいと近づける。
ちょっとでもときめいてくれたかな?
私はその近さに少しドキドキしてしまう。
「あ?何も違わねえだろ」
「ちゃんと見てよお」
チッと舌打ちされる。
それから赤い瞳が睨むように私をじっと見つめる。
「髪でも切ったんか」
「惜しい!正解は"リップが変わった"でしたああいたたたた痛い痛い!ほっぺつねらないで!」
「んなクソどーでもいいこと朝から報告してくんじゃねえ!!モブ共の巣窟に帰れ!!!」
「普通科のこと、モブの巣窟とか酷いよかっちゃん!」
幼馴染みのかっちゃん。
小さい頃から片思いしている相手だ。
残念ながらヒーロー向きの個性に恵まれなかった私は、それでもかっちゃんに近付きたくて雄英の普通科に入った。
毎日のようにこうして何かと理由をつけてはかっちゃんに会いに来る。
「あ!出久くん!おはよう!」
「なまえちゃん!お、おはよう…」
同じく幼馴染みの出久くん。
小さい頃はよく三人で遊んだっけなあ。
出久くんをいじめるのでかっちゃんとはよく喧嘩した。
それでも好きなのは、その中にも優しさを見つけてしまった事とか、将来を見据えて頑張ってるところが格好良いとか挙げればキリがない。
「ひっ…じ、じゃあねなまえちゃん」
出久くんがかっちゃんをチラ見して情けない声をあげる。
そそくさとお友達の元へ行ってしまった。
「変な出久くん。」
「けっ」
かっちゃんが出久くんを見て眉間に皺を寄せていた。
「ほら、せっかく格好良いんだからそんな顔しないの」
眉間をつんと人差し指で触れる。
かっちゃんは触んなと怒る。
「デクとあんま話すな」
低い声で、小さく呟いた。
なんだか珍しいな、と首を傾げる。
「なまえてめェがどんだけ俺を振り向かせようと無駄な努力したとこで意味ねえからな!その化粧とかスカート短くすんのとかやめろ!わァったな!!!!」
がんっと机を蹴飛ばす。
かっちゃんの気を引きたくて頑張ってるのに、と眉尻を下げる。
そうこうしているうちに予鈴が鳴る時間になって、私は渋々自分の教室に戻る。
「もう振り向いちゃってるしね」「他の奴に可愛い幼馴染み見せたくないとかみみっちぃよなー」というクラスメイトたちの声に、かっちゃんがキレるのは数秒後のお話。
君に見合う為の努力