少し遡って、推薦入試の日。
慣れない電車、見慣れない土地。
そして、発熱により頭がうまく働かない。


「雄英高校、どこ…?」


受験票片手に私は泣きそうだった。
せっかくの推薦入試の日。
朝から体調が優れず、熱を測ったら38度を超えていた。
重たい身体引き摺って何とかここまでやってきた。


「…雄英の推薦入試か?」


低く心地の良い声が、すぐ側で聞こえた。
いつから居たのか、白と赤の髪色の容姿の良い男の子が立っていた。

左右で色の違う瞳が、私を見下ろしている。

私の受験票を見て、首を傾げた。

「雄英までの道が分からないのか?」
「は、い」

そこでようやく声を出せた。
少しがらがらになってしまった声が恥ずかしい。

頭はぼんやりするのに、彼に一瞬目を奪われていた事に驚く。

「ついて来い」

彼はそれから何も言わずに歩き出す。
私も彼の背中を必死で追いかけた。

雄英に着くと、彼はこちらを一瞥してすぐに行ってしまった。
お礼を言おうとして、口元まで重たくなってなかなか言葉が出てこないのがもどかしい。

いつか会ったら、お礼をちゃんと言おう。

自分が受かるか彼が受かるか分からないけれど、何となくまた会える気がしていた。







「ドアでか…」

1-Aの教室の前でドアを見上げた。
バリアフリーか。いろんな個性の生徒に対応しているんだなあ。


がらりとドアを開ける。


目に入って来たのは、ツンツン頭の爆破くんとメガネの男の子が言い争いをしている所だった。


「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」


うわぁすごい!
絡まれたら面倒くさそうだ!早く自分の席に行こう。
爆破くんの横を通り抜けようとしたら腕を掴まれた。


「おい!てめェ!ガラス作ってた女!」
「な、なに?てか何その呼び方…」
「てめェあのクソでけェ0ポイント敵倒しただろうが!」
「あ!君が逃げたあの敵ね!?」
「逃げてねェわ!!!!」


耳にキーンときた。


「えっと、それが何か?」
「俺より下の奴が調子乗ってんな!ブッ潰す!!」
「ええ…」


ちょっと理解できないな、それ…。
どうしたらいいか分からず困っていたら、癖っ毛の男の子が教室に入って来た。


「あっ!」


私が助けを求めてそっちに行く。


「君も受かってたんだね!私みょうじなまえですプレゼント・マイクのリスナー同士仲良くしてね!」
「あっう、うん!僕は緑谷出久」


近くにメガネの男の子、もとい飯田天哉くんがやって来て自己紹介してくれた。
それからボブカットの可愛らしい女の子、麗日お茶子ちゃんは模擬試験で緑谷くんに助けられたらしく話しかけて来てくれた。


しばらくお話ししてから自分の席に着く。


「あっ…八百万さんだよね!?」


自分の席の後ろの美人さん。
見間違えるはずがない。推薦入試で一緒になり、途中で倒れてしまった私を助けてくれた優しい女の子だ。

「やはりみょうじさんでしたのね!受かってて良かったですわ」
「あっ…実は推薦は落ちちゃって、一般で入ったんだ」
「そうでしたの…どちらにしてもこれから一緒に学んでいく事に違いはありませんわ!よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね、それから推薦の時は助けてくれてありがとう!」

そんなの当然ですわ、と照れ臭そうにする八百万さん。
お互いにこりと笑い合う。

そして隣をちらりと見る。
白と赤に分かれたツートンカラーの目立つ髪。
左右で色の違う瞳がこちらを見ていた。


「…あ」


私は思わず息を呑んだ。
一瞬、再び目を奪われた。


「推薦入試の時はありがとう、本当に助かりました!」
「…どこかで会ったか?」


男の子は不思議そうに首を傾げた。
忘れられていたことに少し切なくなる。
私は少し苦笑した。


「雄英高校までの道で迷ってたら教えてくれた…」
「ああ、あの時の…」

目を見開いて驚く。
恐らくまた会えるとは思ってなかったのだろう。
彼は別に、と視線を戻してしまう。


「みょうじなまえです」
「…轟焦凍だ」


轟くん。轟焦凍くん。
心の中で反芻する。


「よろしくね、轟くん」
「…ああ」



「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」



急にどこからか声が聞こえて、教室がしんと静まり返った。


「ここは…ヒーロー科だぞ」


ヂュッ!とウイダーインゼリー的なものを飲み、寝袋から出て来た無精髭を生やした男の人。…不審者にしか見えないが恐らく先生。

「ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限君たちは合理性に欠くね」

そりゃ寝袋から急に出て来たら8秒で静かになるよ。
びっくりするもん。怖いもん。

「担任の相澤消太だよろしくね」

担任の先生…こっちもキャラ濃い…。



「早速だが体操着着てグラウンドに出ろ」



え…入学式は…?



04 はりさけろ入学
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