ジャージに着替えて、会場へ向かう。


「すご、街みたい…」


作られた会場のはずなのに、普通に人が住んでいそうなくらい精巧に作られている。

キョロキョロ辺りを見回していると、先程緑の癖っ毛くんの隣にいたクリーム色のツンツン頭を見かけた。

「君も同じ会場だね!」
「ア?誰だてめェ」
「お互い頑張ろうね!あードキドキする!」
「だから、誰だてめェ」

ツンツン頭くん、口悪いなぁ。
スタート地点に並びながら、周りの子たちも少し見てみる。
おお、なんか凄い個性を持っていそうな子ばかりだ!


《ハイスタートー!》


やる気のない始まりの合図に一瞬へ?と声が出る。


《どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?》


プレゼント・マイクの言葉を聞き終わる前に走り出した。

自分の"個性"のガラスでデカいハンマーを作り出す。
通り過ぎ様にまずは一体!!
ぶん、とハンマーを野球のバットのように振るう。
ばこん、と音を立てて崩れる恐らく1ポイントの仮想敵。


弱い。行ける。


建物の上から敵がたくさん居そうな場所を見渡そう。
足を一歩踏み出して、足元からガラスの階段を作り建物の屋上へ駆け上っていく。


「お、あそこたくさんいる」


建物と建物の間にガラスの橋を作り出し、隣の建物に移動する。
上から下を覗く。
下に人がいないことを確認して…。


岩のような形のガラスを作り出しては下に落とす。
ばこん、ぼこん、といい音がして仮想敵はその動きを止めていく。


その動きを何回か繰り返し、一息つく。



「えーっと…いまので何ポイントだろ」



41、44、45…と自身の倒した敵の計算をしながらその手を休ませず倒していく。

近くに敵もいなくなったことだし移動しようとまた橋を作り出して隣の建物へ移動する。



近くでぼん、と爆発音が鳴った。
と思った瞬間爆風が頬を撫でる。
ふわりと横から汗の混じった甘い香り。

あ、さっきのクリーム色のツンツン男子だ。
個性は爆破…なのかな?派手な個性だ。


私を見つけた男の子が明らかに嫌そうな顔をした。


「てめェさっきの…どけ!ここは俺がやる」
「先に来たの私だけど…」
「ア??」

まあいいか。
と思った時に地面が揺れた。
ズズズ、と地響きと共に4体目の0ポイント仮想敵が現れた。


「おっきーーい!」


私はその仮想敵を見上げてた。

すごいね、でかいね!と声をかけようとして横を見る。
隣にいたツンツン爆破くんはもう居なくなっていた。
オイオイ、あなたの強力な個性であれ倒してくれないのかい。


ここにいるとあの仮想敵がやって来そうなのでとりあえず階段を作り出して下に降りて走って逃げる。


「…あっ!?」


途中、仮想敵が壊したらしい瓦礫に挟まれて動けなくなっている女の子を見つける。
さすがにこのままにはしておけない。


私の目指すヒーローは、父のような『人を守れるヒーロー』になることだから!


私はその女の子に向かって走り出す。


「大丈夫!?」
「あっ…足が挟まって…」
「ちょっとごめんね」

少しの隙間から中を覗く。
下手に動かして彼女を圧迫してはいけない。
私はこういう救助活動に優れた個性ではない。

どうしようか思案していると動けなくなった女の子が泣きそうな顔で私に叫ぶ。


「だめ!もうアイツ近付いて来てる!私の事はいいから逃げて!」


無論、そんなことは出来ない。


…なら。


「大丈夫、任せて。」



0ポイントの巨大仮想敵の真下まで走る。



「えっ!?ちょっ…貴方何してるの!?」


後ろから声が聞こえて来たが、構わない。
だってこれしか…



こいつを倒すしか、方法がない…!



私はすっとしゃがみ、地面に手を添える。
はあっ、と息を吐いて、自分の体力全てを注ぎ込む。





巨大な、先の鋭利なガラスを……!!!





地面につけた両手に力を込める。


「…ふっ、ん!!」


瞬間、ズドン!!と先程よりすごい衝撃音と振動。
耐えきれずに尻餅を着いた。



巨大な仮想敵の真ん中を貫いて、きらり、とそれが日の光に当てられ輝いた。



「おお…出来、た…」



さすがに体力を持っていかれた。
体力を使いすぎて震える両足を叩き自分を鼓舞しながら、仮想敵の残骸が落ちてこないところまで何とか走る。


0ポイント仮想敵がばちばちと火花と煙を立てながら崩れていく。


それを見て安心した私の視界は急に白んでいき、意識を失った。







「実技総合出ました」
「救助活動ポイント0で一位とはなあ!!」
「後半他が鈍っていく中で派手な個性で寄せつけ迎撃し続けたタフネスの賜物だ」
「対照的に敵ポイント0で8位!アレに立ち向かったのは過去にもいたけど…ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」
「しかし自身の衝撃で甚大な負傷…まるで発現したての幼児だ」


倒したと言えば、と実技総合2位のみょうじなまえの名前に視線が集まる。


「綺麗な個性で一撃ズドン!だもんなあ」
「この子もそのまま倒れちゃったけどね」
「みょうじなまえ…そういえば推薦入試にも居たな」

相澤が呟く。
推薦入試では具合が悪そうにしていた女子生徒。

二人の話題で持ちきりのその場にため息をつく。
それにしてもこの二人…と相澤は頭をかいた。



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