電車を乗り継いで4、50分。
雄英高校に着いた。
実に推薦入試ぶりである。
「今度こそ、落ちないぞっ!!」
思わず口に出す。
ああ、落ちるとか言っちゃいけないんだったっけ。
とにかく中へ入る。
受付を済ませまずは筆記試験。
これは中々出来たと思う。
次は大広間に移動し、自分の番号の席に着く。
しばらく待っていると、壇上にプレゼント・マイクが現れる。
《今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!》
しーん。
会場は、静まり返っている。
《こいつあ、シヴィー!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?》
いえー。
心の中で答える。
流石にこの大勢の人の中一人で答えるほど心臓に毛が生えてはいない。
「ボイスヒーロー"プレゼント・マイク"だすごい…!ラジオ毎週聞いてるよ感激だなあ」
隣から小さい声が聞こえてきた。
うおお、と嬉しそうに涙を流している癖っ毛の男の子。
「私も毎週聞いてるよ、面白いよねプレゼント・マイク!」
思わず声をかける。
「えっ!はっ!う、うん!」
男の子は私を見るなり顔を真っ赤にしてわたわたとしてしまった。
あれれ、余計なことしちゃったかな。ごめんね。
《入試要項通り!リスナーにはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!!!》
プレゼント・マイクが話し始めたのでそちらに集中する。
《持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!》
模擬試験かー。
推薦の時とはちょっと違うなあと考える。
そういえば推薦の時私を助けてくれた女の子は受かっただろうか…。
《演習場には仮想敵を三種・多数配置してあり、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!!
各々なりの個性で仮想敵を行動不能にしポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ!》
もちろん他人は攻撃や妨害は御法度らしい。
「質問よろしいでしょうか!?」
そこで少し前に座っている体格の良さそうな男の子がビシッと手を上げた。
「プリントには四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」
おお、見た目のメガネに違わぬ真面目っぷり!
すごいなあと見ていると、その眼鏡の男の子は後ろを振り向いてこちらをビシッと指差した。
「ついでにそこの縮毛の君!先程からボソボソと…気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」
隣の男の子だった。
「すみません…」
確かにブツブツ言っていたけど流石に可哀想だ。
「ごめんなさい!それ私です。彼に話しかけてしまったから。以後気をつけます」
へらと笑ってペコとお辞儀した。
気にしない!と隣の男の子に笑う。
驚いた顔と申し訳なさそうな顔をするので、大丈夫だよと指で丸を作る。
《オーケーオーケー、受験者番号7111くんナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0ポイント!そいつは、いわばお邪魔虫!》
スーパー○リオブラザーズのドッ○ンみたいなものらしい。
大暴れしている"ギミック"。
なるほど、本当にゲームみたいだ。
「ありがとうございます失礼致しました!」
メガネの男の子は勢いよくバッとお辞儀し着席する。
《俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校"校訓"をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!》
うんうん、いい言葉だ!私の座右の銘でもある。
《更に向こうへ!!"Puls Ultra"!!それでは皆良い受験を!!》
さて、ここからが本番……!!!
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02 入試