『何でお前じゃなくてあいつが…!』

どこまでも黒と白の世界で、蔑まれ殺気の混じった視線がこちらに向けられていた。


『お前なんて要らなかった』


棺の前で白髪混じりの頭が震えている。



ああ、まただ。



これは、夢。分かっている。
だけど現実で起こったこと。


(違う、私は悪くない。)


唇をきゅっと硬く結び、黒いワンピースの裾をぎゅっと握りしめる。
俯いて泣き出しそうな私の中で


一つの大きな決意が固まった。


絶対にヒーローになって、父が間違っていなかったことを証明する。
私は要らない子なんかじゃないんだと、分らせてやると。 




「…〜〜っ!!」




がばっと起き上がる。
汗で額に張り付いた髪が気持ち悪い。
台所へ向かって、冷蔵庫を開ける。
500mlのミネラルウォーターをぐいっとあおって、一息つく。

窓の外に目をやると、まだ暗い。
時計の針が4時過ぎを指している。
もう少し寝られるが、嫌な夢を見たせいで寝られそうにもない。


「こんな大事な日に、夢に出てこないでよお祖父さん」


…5年前、父が他界した。
敵(ヴィラン)ショッピングモール襲来事件。

誕生日だった私のために無理を言って休みを取ってくれたお父さんとショッピングモールに出掛けた。
そこで敵に出くわして私を守り死んでしまった。
父は最後まで私を守り抜いた。

そして元より祖父に疎まれていた私は更にその溝を広げることになる。

ちなみに母は幼い頃病気を拗らせ早くに死んだ。



…話を戻すが、ショッピングモールに助けに来たプロヒーローに、私は思わず自分が死ねば良かったと泣いた。
『お前を守った父親はヒーローだ』と言ってくれた。
その言葉はずしりと重くのし掛かった。
父が必死に自らの命と引き換えに守ってくれたのに、生き残った私はなんで愚かな事を口にしたのだと反省した。

そして、父のような誰かを守れるヒーローになりたくて、プロヒーローを目指すことした。



それからは個性の特訓も毎日欠かさず行った。
将来役に立ちそうな習い事として、水泳、空手、それからバスケも。

勉強ももちろん頑張って、遂に雄英高校ヒーロー科推薦を貰えた!
…が、まさかの当日に発熱。
せっかくの推薦入試に落ちてしまった。

その事を知った祖父はほくそ笑んだが、それでも私は諦めない。
雄英は一般入試で行く。
どうしても雄英に行きたいから。




そして今日、2月26日…。
中学3年生、みょうじなまえは雄英高校ヒーロー科の一般入試に挑む。



01 みょうじなまえ:オリジン
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