「…で、なまえチャンよォ…。さっき言ってたよな?俺の気持ち聞くって」
「は、はい…わ、私はその…」

少し視線を彷徨わせる。
言うんだ。決めていたから。
このサポートアイテムが完成したら自分の気持ちを伝えて、彼の気持ちも聞き出すって。

私は意を決して口を開く。


「合同授業から爆豪くんと一緒にやってきて、爆豪くんの優しいところを知りました。わ、私は…その、自分の個性で貴方が見えたからとかじゃなくて…」


爆豪くんの赤い瞳がゆらりと私に近付いた。
少し、屈んで私と視線を合わせる。


「ば、爆豪くん…?」


かちゃん、とお互いのかけてるサポートアイテムがぶつかる。
それほど彼と私の距離は近付いていた。


「…で?」


かあっと顔に熱が集まる。
全身が心臓になったかのようにどくんどくんと脈打つ音がうるさい。
この距離で言えと無言で圧をかけられる。


「あ、あ、あの…もう少し離れ、」
「離れねえ」


爆豪くんはサポートアイテムを外し、作業台の上に置く。
そして優しく私のサポートアイテムも外す。


「続きは?」


メガネ型サポートアイテムがなくなっただけで、さらにその距離の近さに戸惑う。
おそらく私の顔はこれ以上ないほど真っ赤だろう。

降参だ。もう言ってしまおう。


「す、す、好きです…」


爆豪くんと視線を合わせるのが恥ずかしくて、色々なところに視線を彷徨わせながら言う。


「こっち見て言え」
「ひっ…」


低い声が、近くで聞こえる。
心臓がどうにかなってしまいそう。

私はもう一度、綺麗なルビーのような赤い瞳を見つめる。


「好きです…爆豪くんが…」


そう告げると、爆豪くんはククと口角を上げて笑う。
意地悪な顔。
でもそんな顔すら私の胸の奥をぎゅうっとさせる。


「上出来だ、なまえ」


頬に手が添えられその赤い悪戯っぽい瞳が近付く。
唇に、柔らかく温かい感触。

「…!」

驚いて逃げようとする私の腰に、爆豪くんの手が回った。
逃げられない。

恥ずかしいのに、幸福感で満たされていく。
キスって、こんなに幸せな気持ちになるんだと驚く。

唇がそっと、名残惜しそうに離れる。
お互いにほうと息をつく。


「俺も好きだ」


熱い眼差しのまま、彼が少し微笑んだ。



22 意地悪な瞳
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