「出来、た…!」
私は自身の作り上げたサポートアイテムを掲げる。
何か作り上げるとついいつもやってしまう癖だ。
同じものをつけていれば遠くにいる人と映像を交換しあえるメガネ型のサポートアイテムだ。
今のところ作ったのは二つだけ。
出来れば誰かに実験体になって欲しいところ。
一人では実験しにくいから。
どうしようか思案していると、工房のドアが開く。
パワーローダー先生かな?とドアの向こうを見て、固まる。
「爆豪くん…」
明らかに苛ついた様子の、爆豪くん。
私を見るなりぐいと迫って来る。
「てめェ、何で俺ンとこ来ねえんだよ!!」
「ええっ!?」
どうして怒っているのかさっぱり分からない。
目を三角にしてすごい気迫でぐいぐい来る爆豪くん。
「あっあの、これ作ってて…」
「ハアアア??サポートアイテム作ってただあ???俺のことシカトしてまですることかよ!なァおい!!!」
「し、シカトしてたわけでは…」
ダメだ、とりあえず落ち着かせないと。
ど、どどどうしたらいいんだろう。
そうだ。このサポートアイテムを見てもらおう!それしかない!
「爆豪くん、し、失礼します!」
バッと彼の目の前まで一気に近付く。
爆豪くんは少し驚いて動きが止まった。
その隙にえいっ!とメガネ型サポートアイテムを彼にかける。
「おい、何してんだてめェ」
自分も同じメガネ型サポートアイテムをかける。
「このサポートアイテムが、ちゃんと作れたら…貴方に少し近付ける気がしたんです。そしたら、私…爆豪くんの気持ちを聞きたくて」
ピ、とメガネの右側のふちのボタンを押す。
このボタンを押せば相手のメガネに自分が今見ている映像が映し出される。
つまり私が見ている景色…爆豪くんが見えるはず。
「見えますか?」
爆豪くんはジッと何かを見つめる。
「ああ、俺が見える。マジかよこれ…」
爆豪くんが少し笑った。
ああ良かった。機嫌が治ったようだ。
「へえ、こんなふうに俺のこと見てたんか」
「そう言われると…少し恥ずかしいです」
「ほんっとに頭上にてめェの名前が見えてんだな。」
…え?
今、爆豪くんは何て言った?
頭上に、名前が見えてる…?
「えっ!!?ば、爆豪くん!!私の個性がそのメガネ越しに見えてるんですか!?」
「?…見えてる」
爆豪くんは当たり前のように言う。
まさかそこまで正確に見えるとは。
もう一度右のボタンを押して、なにも投影してない状態に戻す。
私のサポートアイテムは成功していた。
それだけで物凄い達成感と喜びと嬉しさに溢れる。
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21 踏み出す勇気