甘く噛みつかれた唇が、熱い。
つう、と自分の唇を撫でる。


「なんで、爆豪くん…」


手元の自作サポートアイテムに目を落とす。
もうそれに手を付けることなんて出来ないくらい心が乱されていて。

こんなどうしようもない私に、何であんなことを…。

考えても仕方ない。
彼のことはまだよく知らない。

粗暴で乱暴だけど優しいところがあるとか
近付くとバニラのような甘い匂いがするとか
そういうのは知っているけれど…。


じゃあ、じゃあ、彼は私のことをどう思ってるの?

苛ついて、ムカついて、ただ噛み付いただけ?


「そ、そう!きっとそう…」


何でもマイナス思考になってしまう。
それでも私だってそこまで鈍感なわけじゃない。
自分の気持ちくらい、個性が使えなくなった日に気付いていた。
けれどこんな落ちこぼれの私が彼の相手では相応しくない。

だからこそこのサポートアイテムを作っている。

自分が苦手な一から自分で考えて作り上げるサポートアイテム。

もしこれが完成したら。
少しでも彼に近付ける気がする。

そしたら私の唇に噛み付いた理由も、私のことをどう思っているかも聞きだしたい。


よし!と自分の両頬をぺちんと叩く。


サポートアイテムを作り上げる!
これが私の今の目標だ。
他のことは作り終えてから考える。


隣にいるパワーローダー先生に少し躓いた所のアドバイスを貰おう。

コンコンと隣の工房をノックして。


「聞きたいことがあるんですが…」


とにかく今はサポートアイテムの完成を目指す。







あれから何もねェ!!
嘘だろあのクソアマ!!!

気にならねえのかよ。
それともマジで自惚れてたか?
いやいや、そんなわけはねえ。
あの反応で俺のこと好きじゃねえとかありえねえだろ。


「と、轟くん…今日の放課後なんだけど…」
「…下の名前で呼んでくれねえのか?」
「えっ!で、でもここ廊下だし…」

教室から出ると廊下でクソ舐めプ半分野郎が女といちゃついてやがった。
こいつは何でいつもいつも俺の神経逆撫でしてくんだァ???

ふわふわと周りに飛んでる花がウゼェ。
触って消そうにも消えねえ。


「邪魔だクソカス!!!」


がんっとわざと大きい音を立てて教室のドアを閉め、轟の横を通り過ぎる。

「爆豪の奴なんか一段とキレてね?」
「こええー」

クラスメイトのヒソヒソ声(丸聞こえだが)をも俺を苛つかせる。

「女にフラれたんじゃねー?俺なんてしょっちゅうあんぞ」
「上鳴、アンタじゃないんだから爆豪がそれはないっ…しょ…」

ギロ、とアホ面を睨む。
アホ面と一緒に喋ってた耳郎もピタリと動きが止まる

「え、なに、マジなわけ?」
「え…ま、まさかぁ…」


あーーーー!!うるせぇ!!!!


くっそ、あのアママジでどうしてやろうか。
腹ん中ぐちゃぐちゃにしてやりてぇと思ったのにまさか逆にぐちゃぐちゃにされるとは。

女ごときで自分がここまで苛ついているのが馬鹿馬鹿し過ぎて、笑ってしまいそうになる。

今日はアイツに会う。
決めた。
そんで好きか嫌いかハッキリ言わせてやる。



20 ぐちゃぐちゃな気持ち
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