放課後になり、いつものように工房で作業を開始する。
自分自身で一から開発しているサポートアイテム。
そして私が苦手としている分野でもある。
他人から詳細に注文されたもの以外はなかなか作れない。
自主性のない自分を少しでも変えたくて、頑張って作り出しているサポートアイテムの一つだ。

自分の見ているものを遠くにいる人にも見えるようにする、いわば電話の映像版みたいなものだ。
メガネのような形をしたアイテムで、これで敵の位置や詳細を知れて、遠くに居ても楽に連携が取れる。

…少し前からコツコツと作り始めて、もうすぐ完成する。


「… みょうじ」


がらりと工房のドアが開いた。


「爆豪くん!…あっ!」


思わず声が漏れていた。
彼の頭上に、見慣れた名前を見つけたから。
それだけのことで凄く安心してほうと息をつく。

「あ?なんだよ」
「個性が…戻ったみたいです」
「ハ、そりゃ良かったな」

言葉とは裏腹に、爆豪くんは何故か苛ただしげに私に近づく。
私はいつもと違う様子に驚いて後退りをした。

すぐに壁際に追いやられ、爆豪くんはそのままどんと拳を壁に押し付ける。


「あの…ば、爆豪くん…?」


赤い瞳が熱を孕んで私を見つめる。

「で?」
「で、って…」

ぴくりと眉毛を動かす。
無意識にひっ、と怯えてしまう。

「てめェの個性で見えてる相手誰なんだよ」
「わた、しの…?」

どうしてそんなことを、急に聞いてくるんだろう。
そんなこと知ったってしょうがない。

だって、私はサポート科で落ちこぼれで。
爆豪くんは体育祭優勝の実力者で。


「それは…」


爆豪くんは更に苛立ったようで、がんと壁を殴る。

「じゃあ俺の相手は!」
「えっ…と…」

言ってしまっていいのだろうか、と迷う。
それよりも自分の名前を言うのが恥ずかしい。
少しずつ顔に熱が集まる。


「なァおい…どういう反応なんだよそれ」


私の反応をじっと見た爆豪くんが、いつもより低く甘い声で耳元で囁くように言う。
私はびくりと肩を震わせた。

身体中が熱くなる。
特に耳にじわりと熱が集まる。


「運命の相手を聞いて…後悔、しませんか?」


私は意を決して彼を見上げた。


「しねえ」


私はまだ少し迷っていた。
けれど、ここまできたからには言わないと。

これから先は彼に任せよう。



そして運命の相手に、その名を、告げた。



18 その名を告げる
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