「ごめんなさい。鈍臭くて…」
「ほんっとにな」
爆豪くんがため息をついた。
申し訳なさ過ぎて縮こまった。
「もう、そんなこと言わないの!爆豪くんは」
「うるせェ看護師なりきり女」
「変なあだ名…」
保健室にやってくると、いつもの女子生徒が迎えてくれて、小さな傷だったのでリカバリーガールが出るまでもなく軽く消毒して絆創膏を貼って終わりだった。
「そうだ、貴方はちゃんとご飯食べてる?睡眠取ってる?」
消毒液を仕舞いながら、女子生徒が私に声をかけてくれる。
「は、はい。気をつけてます」
「そっか、良かった」
にこりと笑うと背後に花が咲く。
面白い個性だなあと思った。
そういえば、この子の頭上にも名前が書いてある。
どこかで聞いたことのある名前だと思ったが、何も言わないでおく。
今までも他人にこの個性のことを言ったことはない。
中学の時、頭上の名前と違う人とお付き合いしてる友達がいたが、すぐに別れた。
また別の友達の両親に至ってはお互い違う名前が浮かんでいてある時離婚してしまった。
そういうのを目の当たりにしても、私にはその間に介入する気にはならない。
元々口下手な事もあるが、他人のどうこうに口を出すような身分ではないからだ。
この子も運命の相手と出会ってるだけで他の人とお付き合いしている可能性がある。
「おい、みょうじ」
「は、はい」
「お前、放課後は暇なんか」
「えっ、は、はい。暇ですけど…」
何だろう?私は首を傾げる。
「そんな気になんならまたコスチュームの改良でもなんでもさせてやる。それでチャラだ」
「…!」
少し驚いた。
爆豪くんが私のことを気にかけてくれていることに。
「は、はいっ!なんでもします!いつでも言ってください!」
嬉しくて思わず彼に詰め寄る。
それに、また彼のコスチュームに携われるなら本望だ。
「ありがとうございます、爆豪くん」
私は少し柔らかい表情で言った。
なんだか嬉しかったから。
がら、と保健室のドアが開いて、白と赤の頭が見えた。
保健室にいつもいる女子生徒が彼に近寄って行く。
可愛い女の子とイケメンな男の子…絵になるなあと見ていると頭上の名前が目に入った。
私は驚いて二人の頭上を交互に見る。
…なるほど。
私は小さく応援した。
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14 嬉しく思うのは