今日は合同授業の成果を見る日。
嘘の災害なんちゃら…略してUSJというヒーロー科の人たちがヒーロー基礎学の授業を行う施設にやってきて、サポート科の作ったアイテムをヒーロー科の人たちが使い合格か不合格か決まる。


「うわあ…噂には聞いてたけどすごい…」


辺りをキョロキョロ見渡す。
嘘の災害なんちゃら。すごく大きな施設だ。春にはここでA組の生徒が敵の襲撃を受けた。
A組の人たちにとっては記憶に新しい出来事だろう。


「じゃあ合同授業の最終確認するぞー。呼ばれた者からアイテムを使って仮想敵と戦え」


いつの間にか仮想敵が現れていた。
呼ばれたペア達は前に出て、仮想敵を倒して行く。
みんな凄いなあ。
ヒーロー科の人の動きって、なんだか格好良い。


「次、みょうじ・爆豪ペア」
「は、はははいっ」
「…」

私と爆豪くんが前に出る。
仮想敵を見据えた爆豪くんがハッと笑う。


「こんなよっええ仮想敵じゃなくてもっとつえーの用意しろよ」


バチバチ、と爆豪くんが手のひらに火花を散らす。
私はその少し後ろでその様子を眺める。


「始め」


先生の声がかかり、爆豪くんは手のひらの爆発を利用しながら飛ぶように仮想敵に突っ込み、数体の敵の攻撃をひらりひらりとかわしながら爆破し、ものの数秒で倒した。

その動きに一切の躊躇も迷いもなく。


「…すごい」


私が息を飲んで見守る。
最後の敵を倒した時、仮想敵の破片がばこんと音を立てて飛んだ。


その光景が、すごくゆっくりに見えた。


何故なら、私の方に飛んできていたから。
破片が飛んでくるのがゆっくり見えたからと言って、私の身体は俊敏に動いたりしない。
ぶつかるのが分かってて、身体は全く動かない。


「チッ!」


爆豪くんの舌打ちが聞こえた。
次いで彼の爆発音も。


ぶつかる。
私はとっさに目を瞑った。
瞑ったはずの目蓋の裏に眩い光と爆音。
暖かい体温を感じる。甘い匂いが鼻につく。


ぶつかって…こない…?


そっと目を開けた。
目の前には、見慣れたヒーローコスチュームが広がった。


「ば、ばばく、ごうく、ん」


見上げると、彼がそこにいた。
びっくりしすぎて吃った私をその赤い目はいつものように見下ろす。


周りからきゃあっという黄色い悲鳴と、わあっという歓声が聞こえる。


えっと、えっと、これはどういうことだろう?


私はいつの間にか抱きしめられるような形で爆豪くんの胸の中にいた。


…つまり、助けてくれた。


あんなに遠くにいたのに?


「気ィつけろや」
「ひっ…は、はい」

少し乱暴に離された。
思わず癖でびくびくしてしまう。

ああ、また助けてくれた人に対してこんな態度。

「ば、爆豪くん!ありがとう、ございます」
「ん」

先生が駆けつけてきて、大丈夫かと聞いてきた。
私は頷いて、爆豪くんを見た。


「爆豪くん!う、腕…血が出てます!」
「あ?…うるせェ。ちょっと掠っただけだ。喚くなカス」
「ひえっ…で、でも…」

おそらく私を守った時に破片が掠ったのだろう。
確かに深い傷ではない。
私のせいだ…。

「軽い怪我だな。あとで保健室に行け。あと合格だ。次!」



合同授業は何とか合格した。
私は爆豪くんが気になり過ぎて、授業が終わるまで変な動きになってしまっていた。



13 助けてくれたの?
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