「おい」
「ひゃっ!?」

お手洗いから戻ってきて、教室に入ろうとしたところ、後ろから声が聞こえてきてびくりと身体を跳ねさせた。
わなわなと振り向く。爆豪くんだ。


「何ビビってんだ。…ここ、破れた。直せっか」


ヒーローコスチュームを渡して、指を指す。
確かに破れてしまっているらしい。


「あっ…本当ですね、これくらいだったら直せます。今日使いますか?」
「出来んなら放課後自主トレで使いてえ」
「わかりました!放課後までに直して持っていきますね」
「ああ」

爆豪くんは私に何か言いたそうにしていたが、何も言わずにそのまま去っていった。
そこでハッとする。

あれ、今私普通に爆豪くんと会話出来てた…?

いつもおどおどビクビクしている私が普通にお話しできていた。
彼に少し慣れたのか、対人自体に慣れたのか…。


「あれみょうじ、食堂行かないの?」


食堂とは反対に歩き出した時、クラスメイトが声をかけてきた。

「あ、はい。ちょっと」

私が持っているコスチュームに目を落とし、あーと声を上げる。

「程々にして飯食えよー」
「はい、じゃあ」

軽くお辞儀して工房に向かう。

工房に入ると、早速コスチュームを広げた。
破れた部分を修復し…ようと思ったが、また破れるかもしれない。少し強度を上げておこう。ただし伸縮性を失っては本末転倒だ。

ううん、どの素材を使ったらいいんだろう?
隣の工房にいるパワーローダー先生の知恵をお借りしよう。
コンコン、と軽くノックしてノブを回す。


「あ、パワーローダー先生、相談なんですけど」
「ん?…また爆豪のコスチュームか」
「はい…伸縮性を失わず、かつ強度のある素材でコスチュームを作りたいのですが…」
「ははあ。んー…」


先生はしばらく考え、引き出しから生地を引っ張り出してくる。


「これなんてどうだ?」


触って、少し手で生地を引っ張る。
触り心地も良いし、伸縮性もしっかりある。何より厚めの生地が良い。


「いいですね、これ!」
「耐熱にも優れてる。爆豪の個性に合ってると思うぞ」
「ありがとうございます!これで作ります」
「程々にな」


また程々にと言われてしまった。
私もサポート科の端くれなので、夢中になるとのめり込んでつい時間を忘れてしまう。

その為、常に寝不足と栄養不足になりかけていたりもする。
倒れて人に迷惑を掛けてしまった為、最近は気を付けてはいるけど…。







キーンコーン、と言うチャイムの音でハッとする。
お昼休みが終わる合図の音だ。

お昼ご飯も食べずにコスチューム製作に没頭してしまった。
しかし自分の製作速度に驚く。
お昼休みだけで7割までいくかいかないかくらいまではできた。
これから授業が終わるたびダッシュで工房に行き製作、また授業…と繰り返せば放課後にはギリギリ間に合うだろう。


とりあえず急いで教室に戻る。
午後も忙しくなる。だけど楽しくてニヤニヤしてしまう。



11 私だってサポート科
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