気が付けばサポートアイテムの締め切りまで1週間になろうとしていた。
私はない頭を捻るが、今の彼に必要なサポートアイテムが思いつかない。

戦っているところを見せてもらったが、完成されすぎている。

彼に足りないものも必要なものも、現状ないように思う。


もちろんプロヒーローを目指す限り無限に上は見えてくるだろう。
それはサポートアイテムとか、コスチュームとかそういう域ではなく彼自身の能力の向上であると思った。
だから今の彼にはサポートアイテムは必要ない気がした。


「…!」


それでも私は考えなくてはいけない。


「…!!」


それが授業だから。合格しないと単位貰えないから。進級すら危うくなるから。


「みょうじ!!」


急に聞こえた私を呼ぶ大声に、私は大きく体を跳ねさせ、ひいっと声を上げた。
目の前には目を三角にした先生が立っていた。
考え込んでいたせいで呼ばれていたことに気付かなかった。


「す、すみません…なんでしょうか…」


先生ははあっとため息をついて、コスチュームの詳細用紙を見せてきた。


「これ、は…爆豪くんの?」
「昨日爆豪から話に来てな。何でも"今の俺にサポートアイテムは必要ねえ。代わりにコスチューム改良してもらってやりやすくなったからこれで勘弁してやれねえか"ってな」


コスチュームの元の詳細用紙と、私が改良して申請した用紙、パワーローダー先生がそれに目を通したと言うサインがついていた。


「パワーローダー先生も良い仕事してたって言ってたし、何よりペア相手がサポートアイテムは要らないと言っている以上それもクライアントの要望だと判断した。来週の戦闘訓練でA組に使ってもらってから合格かは決まるが、お前はほぼ合格だよ」


ごう、かく?
私は小さく口に出した。
何も、私はただ気になった所を自分の好き勝手に改良してしまっただけなのに。


いいのだろうか、と眉尻を下げる。


「納得してないみたいだな」
「はい…こんな、与えられた仕事もこなせない私が合格でいいのでしょうか」

そうか、と先生は呟いて、少し考えるそぶりを見せた。

「お前は正直優秀だ。期待している。だからこれからの授業で見せてくれ。ただし今回はペア相手の意向を尊重してやれ」

ぽん、と私の頭に手を置き先生は行ってしまった。
次の授業は残りの合同授業だ。


サポートアイテムの開発が終わったペアは自習となっている。

とにかく次の授業で爆豪くんにお礼を言わないと。







合同授業の時間になり、特別教室を覗いた。
爆豪くんはいつもの席に座っていた。

「あ、あの…爆豪くん…」

控えめに声をかける。
あ?と瞳を私に向けて睨む。
その視線に反射的にびくりとしながら、頭を下げる。

「先生に掛け合ってくれたと聞きました…ありがとうございます!」
「…別に。今の俺にサポートアイテムは必要なかっただけだ」

爆豪くんは珍しく視線を逸らしてそう言った。

「そう、ですか…あの…良かったらなんですけど、これからもコスチュームとか気になる点あったら直しますので言ってください」
「ああ」

何の反論もされなかった事に少し驚いた。
いらねえわとか、何でてめェにとか言われるかと思ってたから。


私は少し嬉しくなって、微笑んでいた。



09 何もかも足りない私
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