「あ」
「お」

初めて爆豪くんとぶつかった曲がり角で、今度はぶつからずに彼と目があった。

そのまま挨拶して通りすぎれば良かったのに、お互い足を止めてしまったせいか少し気まずい。
爆豪くんは私をその赤い瞳で見下ろす。


「…サポートアイテム出来たのかよ」


その言葉で忘れるところだった。
紙袋に入れた、私が改良を加えたコスチューム。


「ごめんなさい、サポートアイテムはまだ…これ、お借りしてたヒーローコスチュームです。ありがとうございました」


人の目を見るのは少し苦手。
だけど爆豪くんはいつも真っ直ぐな目で見てくるから、逸らすと申し訳ない気がして頑張ってその瞳を見て言う。
持っていた紙袋を爆豪くんに渡す。

「ん」

爆豪くんは中身をちらと確認し、受け取った。


「それではまた、合同授業の時に…」


歩き出そうと一歩、踏み出す。


くらり。


目の前がぐにゃと曲がって、視界が白んでいく。
あ、これこの間と同じ…

と思った時にはもう意識が遠くなっていった。







重い目蓋をこじ開ける。
眩しい光が急に入ってきて、少し目を細めた。


「…おい」


びく、とその低い声を聞いただけで体が硬直し、自分がどういう状況なのか一瞬で全て悟った。


…二回目である。


申し訳なくなって目を伏せた。


「てめェは何回ぶっ倒りゃ気が済むんだ?」


言葉遣いの割には、静かで落ち着いた口調だった。
私は布団から爆豪くんの姿を確認して、ごめんなさい、と呟いた。


「爆豪くん!その子目が覚めたの?」


女子生徒がベッド脇にやってきた。
私の姿を確認するとふと微笑んだ。

「えっとね、貧血と寝不足。栄養もちょっと足りてないかも。今日はもう少しお休みしててね」

女子生徒は優しく説明してくれた。
私の様子を何度も確認すると、うん、と頷いて微笑む。その背景にパッと花が咲いて私は驚いた。

「あっ、これ私の個性なの。驚かせてごめんね?」
「え、あの…はい」
「爆豪くん、もう大丈夫だよ。授業に遅れちゃうから戻ってね」

女子生徒が物怖じせずに爆豪くんにそう言うと、爆豪くんは立ち上がった。その視線は未だに私に向いていた。

「コスチューム、改良したんか。」
「勝手に、ごめんなさい…もし使い辛かったら戻します」
「いや、いい。やりやすくなった」


それだけ言うと爆豪くんは保健室を後にした。



残った女子生徒が、今は2時間目が終わったところだと説明してくれた。

「前の授業、A組はヒーロー基礎学だったからコスチューム着たんだね。貴方サポート科なんだってね。すごいなあ」

彼女が笑うとまた背景に花が咲いた。
それが綺麗で、小柄で可愛らしい雰囲気の彼女にとても似合っていて見惚れてしまった。


「   」


男の子の低い、名前を呼ぶ声が聞こえて、彼女はさらに花をぶわっと咲かせた。

「ちょっとごめんね」

嬉しそうな顔でそう言うと、保健室のドアまでぱたぱたと駆けて行った。
白と赤の髪をしたどこかで見た覚えのある男の子がちらりと見えて、二人で何やら話をしているようだった。





私はとても眠くなって、もう一度目を閉じて真っ暗な世界に身を委ねた。



08 二度目の
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