爆豪くんのヒーローコスチュームを借りて、足りないサポートアイテムを考えようと思ったはずなのに、コスチュームの方を見れば見るほど気になる所が次から次へと出てきた。
入学時より成長した身体に合わせ、伸縮性を気にならない程度に少し足し、靴も足が少し大きくなっているので微調整プラス軽量化。
腕の装備は歩いた時に服と擦れたり邪魔にならないように分からない程度の改良を加える。
手袋の保温機能は使い込みによって少し劣化していたのでそこも新品同様にしておいた。
そして、その他諸々。
「こんなところかな…」
ふと、視線を窓に向ける。
気が付くと暗かったはずの外からは日が差していて、朝になっていることを告げていた。
やってしまった、と思った。
作業着のまま昨日の放課後から寮に戻っていない。寮の規定違反だ。
そこで工房のドアが開いた。
「ん?みょうじか。珍しいな」
「あっ!す、すみませんこんな時間まで!」
パワーローダー先生だった。
先生は私が持っているコスチュームを見ると、ふむ、と唸った。
「それは爆豪勝己のコスチュームか?ちょっと見せてみろ」
「えっ、あ、はい…」
元々のコスチュームの詳細用紙と、私が書いたコスチュームの改良点とコスチュームを見比べていく。
「やはりお前の仕事は地味だな。」
「うっ…すみません…」
「いや、これは良い改良だと思う。お前は発目のような派手さは無いが細かい所によく気付く。分かる奴には分かるだろう」
まさかのお褒めの言葉に驚いて、次に恐縮してしまう。才能のかけらもない私はこういう地味な改良をするしかないのだけれど、そこが良いと仰ってくれる。
嬉しいやら申し訳ないやらで身体を縮こめた。
「だが、確かH組はサポートアイテムを作っていたんじゃなかったか?」
「…あっ!」
私はそこでようやく本来の目的を思い出した。
「…ま、とにかく寮に戻って朝食でも食べてきなさい。その様子だと泊まり込みだろう」
「は、はい…そうします…」
もう時間がないのに、サポートアイテムのことを完全に忘れていた。
私は項垂れながら先生にお辞儀して工房を後にした。
寮に戻り、急いでお風呂と朝食を済ませて再度学校へ向かった。
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07 地味な私に出来ること