次の合同授業。
早速発目さん考案サポートアイテムを爆豪くんに使ってもらおうと思い、持ってきた。
「あの…これ、付けてもらえませんか?」
「…あ?なんだこれ」
爆豪くんが怪訝そうな表情で私を睨む。
こういう反応になることは予想範囲内だったのに、ええっと、とつい口籠もりながら目線が泳いでしまう。
「こ、コミュニケーションを円滑にするサポートアイテムで…」
「つけねえ」
「うっ…ち、ちょっとだけでも…」
私が震える手で発目さんのアイテムを差し出す。
爆豪くんはそれを黙ってみていた。
「おい爆豪!いいじゃねーか、それくらいつけてやれよ!」
赤い髪の男の子がにこりと眩しい笑顔でアイテムを優しく受け取った。
「あ」
「悪いな!えっと… みょうじさんだっけ?俺、切島」
「は、はいっみょうじなまえです」
ぺこりとお辞儀する。
明るくて優しい男の子だなあ。
この子が私のペア相手だったらよかったのに…。
「これ腕につけんの?」
「そ、そうです!発目さんが作ってくれて」
「なあ、爆豪、面白そーじゃん。つけてみようぜ!」
「てめェがつけろクソ髪」
く、クソ髪!!?!?
お友達になんていう酷いあだ名を…
と驚いている私を他所に切島くんは何も気にしていない様子だった。これが通常運転らしい。
つけてみていい?という切島くんにこくこくと頷く。
「あの…つけ心地はどうですか?」
「ん?フツーだな!」
ピピッと電子音がして、腕時計の画面に丸が出る。
好印象ということなのだろうか。
「お、丸が出た」
「あの…心拍数によって丸とバツが出るらしいです」
そうなんです!!!と急に発目さんが現れる。
私は毎度のことながら、うひゃあと情けない声を上げた。
「このアイテムはこのベルト部分から心拍数を測定し、相手の気持ちが良いか悪いか測定できるのです!良いと思えば丸!嫌だと思えばバツが出ます!まさしくみょうじさんのようなウジウジしている方にぴったりのアイテムです!!」
ぐいっ、ぐいっ、と一言説明する度に私に近付いてくる。
「そりゃまたスゲーアイテムだよな、爆豪!」
「あ?何でンなアイテム俺がつけなきゃいけねんだよ」
「そりゃーお前が話し合いしねーならだろ!この間も見てたけどよ、ちゃんと話し合ってあげねえとみょうじさんも困ってるぞ」
切島くんが人懐こい笑みで、なっ?と爆豪くんに言ってくれる。
ありがとう、あなたは神様です。
私は感動していた。
「アイテムはつけねえ。最低限の話し合いはしょうがねえからしてやる」
「あ、ありがとうございます…!」
何故か上から目線で言われたが、それでも話し合いをしてくれると約束してくれたのだから大きな一歩だ。
発目さんは後ろでサポートアイテムをつけてくれなかった不満をブツブツ言っていたが、ペア相手の緑谷くんがサポートアイテムの話の続きをしだしたら興味が移ったらしく行ってしまった。
「それじゃあ、あの…サポートアイテムの相談なんですが…」
私はここでようやく、特別授業のスタートラインに立てた気がした。
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05 スタートラインに