「これから一ヶ月、H組はヒーロー科A組と協力してサポートアイテムを作ります。ペアになって最低一つ以上。一ヶ月後ペア相手にはそのサポートアイテムを使って戦闘訓練を行ってもらい、戦闘でも使える物を作れれば合格です。」
先生が特別授業の説明をつらつらとしていく。
え、A組って確か…
「実戦向きのサポートアイテムを作れるなんて!ペアと言わず全員分作りたいくらいです!!」
発目さんががたりと立ち上がってキラキラとした目で言う。
「先生、ペアの相手は自分で選べるのですか?ペア以外のサポートアイテムは作ってはいけないのですか!?」
そのままぐいぐいと担任に詰め寄る発目さん。
本当すごいなこの人は…。
「ペアの相手はこちらで決める。ペア以外のサポートアイテムを作るのは禁止だ、発目!席に戻れ!」
「はい…」
渋々と言った表情で発目さんが自分の席に戻っていく。
どんまい、発目さん…。
って…ペア相手は先生が決めるって…
そんな、まさか…ねえ?
▽
(やっぱりこうなったよ!!)
私は心の中で叫んだ。
目の前にはぶすっとした表情で頬杖をついてき、そっぽを向いている爆豪くん。
A組、H組合同で特別教室に連れて行かれ、そこでペアの発表があった。
私のペア相手は思った通り、爆豪勝己くんだった。
「だりぃ」
爆豪くんがぼそっと呟く。
それに反応したのは眼鏡をかけた体格の良い男の子。
「他のクラスの人にそういうことを言うのは辞めたまえ!爆豪くん!…それより相澤先生!この特別授業の意図をお聞かせ頂けないでしょうか!?我々ヒーロー科はプロのサポートアイテムで事足りている者がほとんどだと思います!」
爆豪くんに注意したり、ビシッと手を挙げて質問したり忙しい人だ。
「ヒーローは自分に何が足りないのか常に考えるものだ。足りない物を補うのがサポートアイテム。しかし相手が毎回上手く自分の欲しい物を持ってくるとは限らない。いらない機能をつけて来たり、その逆もまた然り。技術者に自分の意思をしっかり伝える、これも大事なことだ。」
「なるほど!!」
眼鏡の男の子はすっと着席した。
いや、今の説明で本当に分かった!?すごい適当な言葉を並べられていたように感じたんだけど…ご都合主義では!?
私はちらりと爆豪くんを盗み見る。
頭上の名前はやっぱり変わらず私の名前が刻まれている。
「みょうじさん!!」
急に目の前が発目さんでいっぱいになった。
「ひいっ、は、はいぃっ」
驚いて変な声を上げた。
発目さんは距離が近くて声が大きいからびっくりしてしまう。
「みょうじさんのお相手は爆豪くんなのですね!羨ましいです!楽しそうです!!私は緑谷くんです。彼のサポートアイテムは以前作ったことがあるので別の方が良かったです!」
「えっ…えー…」
後ろで緑谷くんが申し訳なさそうな顔をしている。
き、聞こえてるよ発目さん…!
それに代われるなら代わって欲しいくらいだよ!?
「は、発目さんそれくらいで…先生こっち見てるよ」
「ああ、はい!」
先生はごほんと咳を一つ。
「これから週に二回、この時間を使ってお互いサポートアイテムについて相談してください。ヒーロー科はこんなのがあったらいいなというアイテムの提案、サポート科はそれの実現を目指してください。では始め。」
これから先一ヶ月、週に二回も授業あるのー!?
「ちなみにサポート科はこれに合格しないと単位はあげられません。進級は危ういと思ってください」
ひええ、と私はわなわなしながら爆豪くんを見る。
やる気のなさそうな爆豪くんは、未だそっぽを向いたまま動かない。
私の単位は絶望的だ。
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03 誓ったそばから