「う、ぅうん…」

重たい目蓋をこじ開ける。
真っ白な天井が見える。
上半身を起こすと、ようやく自分がベッドに寝かせられていたことに気付いた。

「起きたかい」

リカバリーガールがやって来て、ふんふんと私の様子を見る。

「ただの貧血だね。動けるかい」
「あ、はい…ありがとうございました」
「礼ならあの子に言ってやんな」


…あの子?


リカバリーガールが視線を向ける先。
目つきの悪い赤い瞳がこちらを睨んで窓際の椅子に座っていた。


「っっ!!」


叫び出しそうになるのを堪える。


(爆豪くん!?)


爆豪くんは静かにこちらを見ている。
先程ぶつかった時のような粗暴な雰囲気はない。

「大丈夫なんか」
「あっ!はいっ!お陰様で!!」

私はびしっと姿勢を正した。

「あんたを抱えて連れて来てくれたんだよ」
「ぶつかった奴がぶっ倒れたらさすがにビビるわ」
「すみません!すみませんん!もう大丈夫です、ありがとうございました」

爆豪くんはチッと舌打ちして立ち上がる。
私の横を通り過ぎただけなのに、必要以上にびくびくしてしまった。せっかく助けてくれたのに申し訳ない。

程なくして予鈴が鳴った。
早く行かなければ遅刻扱いされてしまう。

少しふらつくが、ベッドを降りる。


急いで教室に戻ると何とか遅刻せずに済んだ。
1時間目の授業が始まり、授業なんかもちろん頭に入ってこない。
考えるのは今朝のこと。

突然私と彼の頭上に現れた、運命の相手を知らせるお互いの名前。
相手は体育祭で宣誓をし、見事1位になった爆豪勝己くん。
見た目も態度も少し怖い人だと思っていた…けど


(爆豪くん、倒れた私を助けにわざわざ戻って来てくれたんだな…思ったより悪い人じゃなさそう)


いや、でも…流石にない!
爆豪くんも私なんかが相手では可哀想だ。
運命の相手だからってくっつかないといけないというわけではない。
なるべく会わないよう関わらないよう。


ひっそりひっそり学園生活を過ごそう。


それが一番良いに違いないから。



02 関わらないと誓った
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