世界総人口の八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在。
個性と呼ばれるそれは、私… みょうじなまえにも例外なく発現した。


幼稚園の年長になったある日、母の頭上に父の名前が浮かんでいるのに気付いた。


街を歩くと、頭上に名前のある者、いない者がいる。
同じ幼稚園に通ってる友達はほとんどない。
幼稚園の先生は大体あって、でもやっぱりない先生もいて。


後に気付く。


頭上に浮かぶ名前は、その人の運命の相手の名前なのだと。


まだ出会っていない人には名前は浮かんでいない。

小学校のある時、新任の女の先生がやってきた日に今まで名前が浮かんでなかった担任の男の先生の頭上に、お互いの名前が出たのを見た。
数年後、二人が結婚したと風の噂で聞いた時はさすがに驚いた。





そして現在…雄英高校サポート科1年H組。
今日も私の頭上には、運命の相手の名前は浮かんでいない。


お気に入りの手鏡で身嗜みの最終確認を済ませ、寮を出る。

今朝は髪がいつもより綺麗に纏まったし、朝の番組の星座占いが1位だったし、朝食に大好きなフレンチトーストを食べた。

何だか今日は良いことが起きそうな予感がしていた。


…はずだった。


教室に向かう途中の曲がり角、少し急ぎ気味に歩いてた私は、反対側からやってきた人とどんと鈍い音を立ててぶつかった。
ぶつかった弾みで私は尻餅をつく。


「いっ…」
「どこ見てンだカス!」


怒鳴り声が聞こえて、ひいっと情けない声が出た。
ぶつかった鼻が痛い。お尻が冷たい。


「…あっ」


見上げる。
この男の子どこかで…?
…そうだ、体育祭で一位を取っていた爆豪くんという子だ。
体育祭は参加せず遠くから見てただけだったがあのド迫力は今思い出しても恐ろしい。そんな恐ろしい人とぶつかってしまった。

は、早く謝らないと…

私は何とか立ち上がって、爆豪くんを見る。

「ご、ごごごめんなさい。私がちゃんと見てなかった…から…」



ん?



んんん???



爆豪くんの頭上に、名前が見える。
それも物凄く見覚えのある名前。



… みょうじなまえ。



同姓同名??
私は首を傾げた。
う、嘘だよね??そんなわけないよね?


「あ?てめェどこ見てやがる」
「ひいっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」
「チッ…気を付けろや!」


捨て台詞のように言葉を吐き出して、ガニ股気味に爆豪くんは去って行った。


私はしばらく彼の後ろ姿を見ていた。
そして徐に手鏡を取り出して自分の頭上を確認する。
その頭上には今朝はなかった筈の文字。



…爆豪勝己



私は思わず小さくひゃぁあ、と叫んだ。


ありえない、ありえない!


あの怖い人が私の運命の人!?
そんな、まさか!!


私の人生どうなってしまうの?


目の前が真っ白になる。
頭がふわふわする。
…そのまま意識が遠のいた。



01 出会ってしまった!
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