「みょうじ」
「と、轟くん…」

轟くんが熱っぽい瞳で私を見つめる。
どきと胸が高鳴って、目を逸らせないでいる。
私のすぐ後ろは壁で逃げ場がない。
きっと今の私の顔は真っ赤で困った顔をしているだろう。


「轟、こんなとこでいちゃつくなよな」
「チッ…イケメン爆発しろ」


上鳴くんと峰田くんのからかうような声が聞こえてきて、私の顔はぼっと火が出そうなほど熱くなる。
轟くんは特に何も気にしていないようだ。


「それであの…今日はどうかしたの?」


呼び出されたのでA組の教室までやって来た。
ヒーロー科は凄い人たちばかりなので普通科でも普通の中の普通の私は、この教室の前に立つのは少し気後れする。
…でもよく考えたらその"凄い人"の筆頭みたいな人とお付き合いしてるんだよなあ私…夢みたい…。


「ああ、悪ィ忘れてた。…今日放課後大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」


大きく頷く。
轟くんと少しでも一緒にいられると思うと顔が綻ぶ。
でも何かあるのかな?


「もうすぐテストだろ、みょうじ英語できるか?」
「文系だからできるけど…轟くんに教えられるレベルがどうかは分からないよ?」
「そうか。そん時はそん時だ。みょうじも苦手な教科合ったら教えられる範囲で教える」

頭にポンと手を置かれる。
それだけで幸せな気分になる。
ふわりと二人の周りに花が舞う。


「誰かあいつらにここがA組の教室の真ん前の廊下だってことを教えてやれ」
「ほんとそれな」
「羨ましすぎるぜイケメン…!」
「轟、やるなー!」


…何か、視線が増えているような…。


轟くんは相変わらず気にしていないようだ。
ちらと教室からこちらを覗いてる瀬呂くん、上鳴くん、峰田くん、切島くんが見えた。

私は恥ずかしくなって俯いてしまう。


「あっあの、もう予鈴鳴るね!また放課後!!」
「ああ」


耐えきれなくなった私は思わず逃げるように自分の教室へ向かう。

お付き合いするようになって早数日。
轟くんは距離が近いのでついドキドキさせられてしまう。
そのうち慣れるのだろうか…想像もつかない。




18 慣れない近さ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -