びっくりした。
轟くんがあんな目で私を見つめるから。

あの後寮に帰っていろいろ考えたけど考えたところで無駄だった。
彼の気持ちなんて彼以外分からない。


「なまえ、今日ずっとぼーっとしてるね」
 

友達が私の席までやって来て、少し心配そうにしている。

「うん…ちょっと考え事してて」
「それって、轟くんのこと?」

どきり。
心臓が跳ねる。

「えっ、な、なんで?」
「なまえ分かりやすいから個性なんて出てなくても分かるよ」

くすくすと笑う。

個性にばかり気を取られていたけど自分自身が分かりやすいとは自分でも気付いていなかったので驚く。


「何かあったの?」
「えっと…」


昨日の出来事を友達に話す。
友達は驚いた顔をした後はあとため息をつく。
それから少し意地悪な顔をして、悩め悩めと私に笑いかけた。

この子はこういう子なのだ。例えば数学で分からないところがあって教えてもらおうとしても絶対に答えは教えてくれない。
やり方はもちろん教えてくれるけど。

今回は何も教えてくれる気はないらしい。


「もう、話損だよー!」
「あはは、まあまあ。なるようになるよ。轟くんもアンタのこと嫌ってやったんじゃないんだしさ」
「それは…そうなのかなあ?」


もしかしたら何か怒らせる事をしたのかもしれない。
そう思うと少し気が重い。


「みょうじさん」


ふいに別方向から呼ばれる。…田中くんだ。
昨日のことがあって田中くんとも少し気まずい。
何か話したいことがあったようだし、それを遮ってしまったことが申し訳ない。

「田中くん。どうしたの?」
「えっと…今日って放課後空いてるかな?」
「え?えっと…」

放課後は大体いつも保健室に行っている。
けど、別に行かなくてはいけないわけではない。


「う、うん。空いてるよ」


田中くんは昨日同様、少しもごもごとした口調だった。


「今日の放課後、裏庭に来てくれるかな?」
「何かお話?」
「…うん。」


何の話だろう。
田中くんとは一学期で隣の席だったからたまにお話ししたけど、真面目な話をするような仲ではない。
二人きりで話なんて少し気まずい。
けど誘われてるからには無碍にできない。


「そっか、分かった」


田中くんが不安そうな顔をしているので、大丈夫だよの意味も込めて微笑んだ。
田中くんは少しほっとした表情をしてそそくさと席に戻って行った。


もしかしたら何か悩み事かもしれない。

あんなに思い詰めた顔をして…やっぱり昨日しっかり聞いておいてあげればよかったと自分のことでいっぱいいっぱいになっていた自分が恥ずかしい。


一部始終を見ていた友達が、ジュースのパックをぢゅうぅ、と吸ってからあーあ、と小さく声を漏らした。



14 一難去らずにまた一難
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テーマ「人外ファンタジー」
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