放課後、トレーニングルームで自主練していると左肩がぴりと痛んだ。
そこでようやく昼に怪我したことに気付いた。
昼に保健室に行った時、みょうじにまた放課後来るように言われてたことを思い出す。
保健室のドアを開けると、緑谷と目が合った。
「あ、轟くん!」
その足元には跪いて緑谷の足首に包帯を巻くみょうじの後ろ姿が見えた。周りには花が咲いている。
その光景を見た時、何故だか心臓がちりと痛んだ。
「…緑谷、怪我したのか?」
「軽く捻っただけだよ」
「そうか」
困ったように緑谷は緩く笑った。
みょうじと何か話しているようだがよく聞こえなかった。
二人の様子をぼうっと見ているとリカバリーガールがやってきた。
昼に怪我したことはみょうじに聞いたのかもう知っていて、すぐに怪我の治癒をしてくれた。
「アンタももう治ったろ?ほら二人とも飴ちゃん持ってきな」
リカバリーガールが俺と緑谷に飴を渡す。
お礼を言って、みょうじを見ると何故か照れ臭そうにしていた。先ほどではないが花がみょうじの周りをふわりと漂っている。
緑谷が自主練について行きたいと言うので、断る理由もない俺は頷いて二人で保健室を出た。
去り際に、みょうじがこちらに笑顔で手を振っているのが見えてふと頬が緩んだ。
「…轟くん、みょうじさんがいるといつもより表情が柔らかいよね」
緑谷が横で優しく嬉しそうに言う。
…そうなのか?
俺は首を傾げた。
「そうか?あんまり意識したことねぇ」
「うん。みょうじさん、優しいもんね」
緑谷はみょうじと仲良いんだな、とか
どんな話してたんだ、とか
少し気になったけど聞くのはやめておいた。
何故だか自分の知らないみょうじを、緑谷の口から聞きたくないような気もした。
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03 その感情はまだ知らない