それから三ヶ月。
色々なことがあった。

轟くんは休みの日に特別講習で出ていくのでとても忙しそうだったし、その間各々インターンに赴いたりその先で事件があったり。


文化祭でバンドとダンスを披露し大成功したり。
そして轟くんにはたくさん心境の変化があったようでお父さん…エンデヴァーが敵との戦いで見事勝ったけれど怪我をし、家族にはこれから向き合うと言ってくれたようだった。

私はエンデヴァーが無事で良かった。許せないこともあると思うけれどこれから少しずつ家族になれば良いんだよと声を掛けたら轟くんは相変わらず優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた。


B組との合同訓練もあったり、それなりに忙しい日常を過ごしていたので私はうっかりあの日の言葉を忘れそうになる。


『みょうじの事、俺がどう思ってるか聞いてほしいから。仮免取ったら聞いてくれ』


その言葉を時々思い出しては、一人でばたばたと手足を動かして顔を赤くし悶絶する。

そんな日々ももう終わる。


「おはよー…」
「お、おはようござ…どうしました!?」

百ちゃんが私の顔を見て驚く。

「ね、眠れなくて…」
「何か気になることでも…?」

百ちゃんが不安そうに私の頬に触れる。
少しくすぐったい。


「もしかして!」
「今日だよね!」


三奈ちゃんと透ちゃんが元気にやって来た。


「「仮免補講最終日ー…!!」」


ひああ、と私はその言葉を思い出して顔を真っ赤にするとその場に崩れる。


あれから三ヶ月。
本当にたくさん色んなことがあったけれど、私と轟くんの間には驚くほど何もなかった。


「轟、今日帰ってきたら告白してくるんだよね!」
「なんて言うのなまえちゃんー!」
「えっ?えー…あっ!ほら!皆雪降ってるよ雪!!」


私が寮の外に指を差すと、忘れてた!と言わんばかりに二人は雪ー!と走って出て行った。
一先ずふぅとため息をつく。


「… なまえさんはもう答えが出てるんですの?」
「…うん、出てるよ。たっぷり三ヶ月間考えたから」
「そうですか、どんな答えを出してもきっと轟さんなら受け止めてくれますわ」


百ちゃんが優しく微笑む。
私はうん、と頷く。

ありがとう、百ちゃん。


クラスメイトたちと合同スペースでまったりしたり、外で雪遊びをしてドキドキしながら時間が経つのを待つ。







しばらくして帰ってきた轟くんと爆豪くんは、仮免取得30分で敵を制圧したと言うのだからさすがの私も驚いた。
轟くんは私を見るなり優しく微笑んで「ただいま、取ったぞ。仮免」と言った。
私は「おめでとう」と変な顔にならないように微笑むので精一杯だった。


「…覚えてるか?仮免落ちた時の俺の言葉」
「う、うん、覚えてるよ」
「そうか、じゃあ…俺はみょうじが好」
「ま、ままま待って!!ここで!?皆いるけど!」


ん?と轟くんが首を傾げる。
それからああ、と呟いて私の手を取る。


「俺の部屋でいいか?」
「…へっ!?はっ、うん!!?」


クラスメイト達が唖然と注目する中、私は轟くんに手を引かれ男子用のエレベーターに乗せられた。


途中、女子達からは頑張れ!と目配せされ、男子達からは好奇の目で見られた。皆一様に少し頬を染めて。


そして手を繋いだまま、エレベーターという狭い空間に二人無言だった。
轟くんは何処か焦っているようで、うずうずとしている様子が見て取れる。

少し忙しなく彼は自分の部屋に私を招き入れ扉を閉めると、そのまま振り向く。
その頬が少し赤いのにようやく気付いた。

彼も緊張してるんだ。
その熱い手が、瞳が、私を掴んで離さない。



「好きだ、みょうじ」
「…っ」



知ってた、三ヶ月も前から。
だから私も三ヶ月待った。

長かった。
今までの人生でこんなに長い三ヶ月を過ごした事はない。
待ち望んでた言葉が、この状況が、私を熱で浮かせる。


「…私も、好き。ずっと、好きでした」


そう…きっと、君を初めて見たあの推薦入試のあの日から。
私は轟くんにずっと、恋をしていた。


「三ヶ月、長かった」
「うん」


轟くんが、戸惑いながら私を抱きしめる。
私はその背中に手を回す。


ああ、何て熱いんだろう。
外で雪が降ってるなんて信じられないほど熱くて、蕩けそうだ。


「ずっと、こうしたかった」
「…うん」
「挫けそうになった事もあった。いつもうお前に触れてやろうかって考えた時もあった。みょうじが別の奴のこと好きなんじゃないかって不安になった事も」
「私も…同じだよ…轟くんと同じ」


轟くんが優しく私から身体を離して、男の子のゴツゴツとした手が私の頬に触れて軽くびくりと身体が揺れる。


「じゃあ、俺が今したいことも、同じか?」
「…う、…多分…同じ…」


私は少し戸惑って赤い顔を更に赤くして、視線を彷徨わせながら言う。


「そうか」


彼はくつりと笑って、優しく私の頭を撫でてから、



慈しむように優しく、唇を重ねた。



81 告白
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