「何を!してんだよ!!」
緑谷くんの声で二人がハッとする。
私は向かって来る敵に向かって走り出す。
ガラスのナイフを構え敵を制圧にかかる。
しばらく目の前の敵に没頭していると、後方で凄い威力の熱風が巻き上がる。
「…!轟くん」
夜嵐イナサと協力したんだ、とニッと笑って目の前の敵にまた集中する。
とにかく向こうに近づけさせるな!
ナイフだけじゃなく、フル活用しろ!
今まで使ってきた道具、技、戦い方全て活用してここは私が食い止める。
バン!と敵を撃ち動きを抑制していると、ビーーー!とけたたましく音が鳴り響く。
『えーー、只今を持ちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますがこれにて仮免試験全工程終了となります!!』
▽
「こういう時間いっちばんヤダ」
「分かるよ響香ちゃん」
「人事を尽くしたならきっと大丈夫ですわ」
百ちゃんが私と響香ちゃんに手を置いて、優しく微笑んでくれる。
私はこくと頷く。
…そして、視線は轟くんへと移す。
最後の救助試験の時、夜嵐イナサと言い合ってお互い邪魔になっていたようだから少し心配だ。…大丈夫かな…。
『皆さんお疲れ様でした。これから発表を行いますが、その前に一言。採点方式についてです。我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる二重の減点方式であなた方を見せてもらいました。』
心配になっていると放送が流れて結果発表が近づいてきてドキドキとする。
『つまり、危機的状況でどれだけ間違いのない行動を取れたかを審査しています。とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載ってます。今の言葉を踏まえた上でご確認下さい』
バン!と急に張り出され皆が一斉に自分の名前を探し出す。
「みょうじ… みょうじ…あった!!」
私は飛び跳ねて喜ぶ。
次に轟くんの名前を探すが、ない。どこにも。
嘘?あの轟くんが…落ちた…?
轟くんの方を見ると、少し気の抜けている様子の轟くんが立っていた。
「轟くん…」
「みょうじ」
「えっと…」
轟くんは硬い顔のまま私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「!?」
突然のことで驚いていると轟くんは「納得してる」とだけ言った。
私は何で声をかけていいか分からず、そっか、とだけ返した。
「轟!!!」
夜嵐イナサが轟くんに寄ってくる。
また何か嫌なことを言うんじゃないかと一瞬思ったけど杞憂だったようで、夜嵐イナサがバッと頭を下げた。
「ごめん!!あんたが合格逃したのは俺のせいだ!俺の心の狭さの!!ごめん!!」
「……。元々俺が撒いた種だし…よせよ。お前が直球でぶつけてきて気づけたこともあるから」
轟くんが落ちたことを知った三奈ちゃんが心配そうにやってきて、瀬呂くんはうちのツートップが落ちてんのかよ!と少し残念そうだった。
『続きましてプリントをお配りします。採点内容が記載されてますのでしっかり目を通しておいてください』
みょうじさん、と呼ばれプリントが渡された。
79点。意外に高得点だ。
他人を気にしすぎているということ。
土壇場での応用力と判断力が少し欠けていると言った内容だった。
『次は皆さんがヒーローとして規範となり、抑制できるような存在とならねばなりません。今回はあくまで仮のヒーロー活動認可資格証明書。半人前程度に考え各々の学舎で更なる精進に励んでいただきたい!』
その言葉で私は気が引き締まる。
そうだ、仮免を取れたと言ってもまだ半人前。
ここからなんだ!
『そして…えー不合格となってしまった方々、点数が満たなかったからと言ってしょげてる暇はありません。君たちにもまだチャンスは残ってます。三ヶ月の特別講習を受講の後、個別テストで結果を出せば君たちにも仮免許を発行するつもりです』
…!!
私はその言葉で轟くんの両手を掴む。
轟くんは少し驚いた顔をしてから、ふと緊張の解けた表情に変わる。
一次は所謂落とす試験だったが、二次まで残った100人は出来るだけ育てていきたいというのがヒーロー公安委員会の考えのようだ。
「よかったね!轟くん!」
緑谷くんが嬉しそうに轟くんに駆け寄る。
轟くんは軽く微笑んで頷いた。
「すぐ…追いつく」
その言葉に緑谷くんや飯田くんが笑顔で頷いた。
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79 試験その後に