ジリリリリリリ、と急に警報が鳴り響く。
何だ何だと皆身構えていると放送が入る。
『敵による大規模破壊が発生!規模は○○市全域、建物倒壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく救助先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う!』
そしてガゴッと音がして屋上や壁が開いていく。
またこういうシステムらしい。
そしてすぐにその半壊したフィールドが目前に現れる。
『一人でも多くの命を救い出すこと!スタート!!』
合図で皆駆け出す。
さっきは学校単位で争い合っていたが、今度は瞬時に相手の個性を理解して協力する必要がある。
なるほど、ヒーローっぽい。
皆各々自分の出来ることを探し、協力して傷病者を介抱したり助け出したり。
私も瓦礫に埋まっている女の人を、瓦礫の下に手を入れガラスで支柱を作り出して助け出す。
今まで救助活動は苦手だと思っていたが、私にも考えればやれることはたくさんある!
女の人を救護所まで肩を貸しながら連れていく。
「君!その女性を見せて!」
「は、はいっ!両足が瓦礫に挟まれて骨折しているかもしれません、身体中に軽傷もあります!」
「…うん!じゃあ右のスペースに連れて行ってあげて!」
「はい!」
言われた通り右のスペースに腰を下させると、ありがとうと女性にお礼を言われる。
私はお大事に!と笑ってまた走り出した。
その時。
爆発音が地鳴りと共に響いて、空気が震えた。
なんだ!?と顔を上げると、プロヒーローギャングオルカがサイドキックだろうか仲間を引き連れ敵っぽい出で立ちで現れた。
そして放送が流れる。
『敵が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行してください』
救護所のすぐ近くに現れたギャングオルカ。
さてどうしたものか。
音波はガラスで防げるとして…しかし防ぐ隙を与えてくれるかどうか…単身立ち向かうのは無理だ!
誰かとチームアップして…。
「緑谷くん!」
「みょうじさん!」
少し遠くにサイドキック達が緑谷くんを囲んでいた。
私は慌てて加勢に入る。
「後ろは任せて!」
遠くの敵はピストル型アイテムで狙い、詰め寄ってきた敵にはナイフで牽制。
斬りかかると見せかけて懐まで入り込んで思い切り鳩尾付近を体重を乗せて蹴り飛ばす。
「!…怪我人!」
緑谷くんが駆け寄って抱えようとするのを、私が止める。
「緑谷くん!私が連れてく。緑谷くんの方が戦闘力高いしね!」
「え、あ…」
「緑谷!みょうじ!避難か!?手伝う!」
尾白くんや三奈ちゃん、常闇くんがやって来る。
見慣れた顔が増えて少しホッとする。
「みんな!どこにいたの?」
「あっちの水辺付近さ!皆街の方に向かったから手薄なとこにいたんだが敵がここらに大挙するのを見て応援に来た!」
「よかったー!私この人救護所まで連れてくからここお願い!」
「分かった!」
私は怪我をした人を肩を回して救護所まで連れて行く。
幸いすぐ近くなので怪我の状況などを説明してすぐに引き渡すともう一度戦場へ戻った。
「アンタが手柄を渡さないように合わせたんだ!」
「は?誰がそんなことするかよ」
「するね!」
轟くんが戦っているのが見えたので駆け寄ると、何やら夜嵐イナサと言い合いをしているようだった。
「だってアンタはあの…エンデヴァーの息子だ!」
「さっきから…何なんだよお前」
イラついた様子の轟くん。
「親父は関係ねえ」
その轟くんにべちっとセメントガンが当たる。
「轟くん…?どうしたの…?」
私の顔を見るなり、轟くんがハッとした顔をする。
そんなことを気にしない夜嵐イナサが、風になって飛び回りながらセメントガンを避ける。
「関係あるんだなこれが!ヒーローってのは俺にとって熱さだ!熱い心が人に希望とか感動を与える!伝える!!だからショックだった」
私もセメントガンを避けながら応戦するが、二人の言い争いは終わらない。
「そして入試の時アンタを見てすぐにアンタが誰かわかった。あんたは全く同じ目をしていた」
「同じだと…ふざけんなよ、俺はあいつじゃねえ」
夜嵐イナサとエンデヴァーの間に何か合った。
そしてそれを息子である轟くんに同じものを感じて嫌っている。
「夜嵐くん!君の言いたいこと分かるよ。分かるけど。…私はエンデヴァーの冷たい言葉で目を覚ましてヒーローを目指した。君がショックを受けたのも分かった。けどそうじゃない人だっている!それにエンデヴァーはエンデヴァーだし、轟くんは轟くん!別の人間だよ!!息子だからどうとかそういうの…今、関係ある??」
アイテムで撃ち抜いて、敵を減らしていきながら夜嵐イナサに語りかける。
「アンタは"そっち側"だからそんなことが言えるッス!!」
「だから、それが関係ないって言って…」
「俺は!アンタら親子のヒーローだけはどーにも認められないんスよォーーー!」
以上!と夜嵐イナサが締めくくると、お互いの夜嵐イナサの風と轟くんの炎の個性が、ぶつかった。
そして風で炎が吹き飛ばされ、その先にはギャングオルカの攻撃を受け、動けなくなっていた傑物学園の真堂さんに当たりそうになる。
「!!!」
ガラスで…いや遠すぎる!間に合わない!
どうするか考えながら意味もなく彼に向かって走り出す。
するとフルカウルで飛んできた緑谷くんが真堂さんを引っ張り炎を避ける。
「何を…してんだよ!!!!」
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78 救助演習