「あ…!轟くん!」

控え室に入ると、端っこの方に座ってるのが見えて、思わず笑顔で駆け寄る。
轟くん以外のクラスメイト達はまだ来ていないようだった。


「みょうじ、お前も単独行動だったのか?」
「いやあ…分断されちゃってそうせざるを得なくなった」

お隣に座ると、轟くんがふと微笑む。

「まあ…一次通過して良かった」
「そうだね、後は他の皆がどうなるか…」


と、ふと視線を感じて顔を上げる。
視線を感じた先には、さっきの夜嵐イナサがいた。

…私じゃなくて、轟くんを見てた…?
推薦入試で一緒だっただろうし、面識があるから気になっているのだろうか。
ふと首を傾げる。


そうしてる間に百ちゃんや梅雨ちゃん、響香ちゃんに障子くんもやって来た。







「皆さんよくご無事で!心配していましたわ」
「良かったー!」
「ヤオモモ、みょうじ!ゴブジよゴブジ!つーか早くね!?皆!」


切島くんと上鳴くんは爆豪くんについて行ってしまったので少し不安だったけど二人とも無事だったようだ。
次いで緑谷くんとお茶子ちゃん、瀬呂くんは途中合流出来たようで力を合わせて一次通過を果たしたらしい。


「A組はこれで12人か」
「あと9人だね」
「アナウンスでは通過82名…枠は後18人…飯田さん大丈夫かしら…」
「飯田くん…?」
「きっと皆大丈夫だよ、百ちゃん」


私が何の根拠もないけれどそういうと、百ちゃんはそうですわね、と微笑んだ。
皆クラスメイトを信頼してる。
だから根拠はなくても絶対に合格してくれると信じてる。







「「「っしゃあああああ!!!」」」


皆の声がこだました。
1年A組、皆一次試験通過!!

「スゲェ!こんなんスゲェよ!」
「雄英全員一次通っちゃったあ!」
「やったー!!」


わーいわーい!と賑やか組ではしゃぐ。


『えー、100人の皆さん、こちらをご覧ください』



壁に取り付けてある大きい液晶テレビがパッとついた。
そこにはフィールドが映し出されている。


「フィールドだ」
「何だろね」


呑気に見ていると、ボンボンとフィールド上の建物やら何やらとにかく色んな場所が爆発していく。
それを見て、ーーー何故!!と皆声を失う。


『次の試験でラストになります!皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』


救助演習…!
うーん、苦手分野だ…と思っていると後ろで上鳴くんと峰田くんがパイスライダー?とか謎の言葉を発する。
透ちゃんが「現場に居合わせた人のことだよ!授業でやったでしょ!」と説明してあげている。


『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者として…どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』


そして10分の休憩時間が挟まれて、各々先程の試験内容がどうとか大変だったとか話し合っていた。
緑谷くんは何故か上鳴くんと峰田くんに試験中だぞナメてんのか!とキレられていた。何があったんだろう。


士傑高校の毛むくじゃらな人が爆豪くんに「無礼を働いて済まなかった、雄英とは良い関係を築き上げていきたい」と言っていた。こちらも何かあったようだ。

それを横目で見ていた轟くんが、夜嵐イナサに駆け寄って声を掛けた。轟くんのそんな行動が少し意外で、私はその様子を少しだけ離れた位置から見守った。


「俺なんかしたか?」
「……ほホゥ」


轟くんを見下ろす夜嵐イナサは、他の人に対している時よりも雰囲気が冷たく感じる。


「いやァ申し訳ないッスけどエンデヴァーの息子さん」
「!?」
「俺はあんたらが嫌いだ。あの時よりいくらか雰囲気変わったみたいスけどアンタの目はエンデヴァーと同じッス」

私は思わず轟くんの元へ歩き出した。

「夜嵐どうした」
「何でもないッス!」

けむくじゃらの人に呼ばれて行こうとする夜嵐イナサの服を思わず掴む。


「!?…何スか?」


驚いたように私を見下ろして眉を顰める。


「これだけは言わせて!轟くんは良い子だよ!君がどう思おうと勝手だけど、彼はとっても優しい子なんだから!」
「…自分にはそうは思えないッス」


軽く手を振り解かれ、夜嵐イナサは行ってしまった。


「みょうじ…」
「あ、よ、余計なこと言ってごめんね…」
「いや、嬉しかったよ」


そうは言うけど、さっきの夜嵐イナサの言葉が気になるのか轟くんの表情は強張ったままだった。



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