ヒーロー仮免許取得試験当日!!


試験会場、国立多古場競技場。

「緊張して来たー」
「多古場でやるんだ」

皆そわそわした様子だ。
これからどんな試験をするのか全く想像がつかない。
合格者数5割を切るっていう話だし、緊張せずにはいられない。


「この試験に合格し仮免許を取得できればお前らタマゴは晴れてヒヨッコ…セミプロへと孵化できる。頑張って来い」


先生の言葉で、場の空気が引き締まる。
私もぐっと拳を握りしめて気合を入れ直す。
弱気になったって仕方ない!なるようになるさ!


「っしゃあ!なってやろうぜヒヨッコによぉ!」
「いつもの一発決めてやろうぜ!」


皆が固まってあの校訓を口にしようとした時だった。


「せーの…Puls…」「Ultraーーー!!」


知らない他校の生徒が現れ、言葉を奪われた。
クラスメイトたちは驚いて固まり、振り返って声の主を見る。


「勝手に他所様の円陣に加わるのはよくないよ、イナサ」
「ああしまった!どうも大変!失礼!致しました!」


思い切り頭を下げ、地面にガツンとぶつかる。
隣にいた緑谷くんからヒイイと声が聞こえた。うん、こんな人いたらビビるよね普通。


ってあれ、あの制服…。


「東の雄英、西の士傑」


数あるヒーロー科の高校の中でも雄英に匹敵する程の難関校…士傑高校!


「一度言ってみたかったッス!プルスウルトラ!自分雄英高校大好きッス!」


暑苦しい人だな、と思ってると相澤先生が夜嵐イナサ、と呟いた。
夜嵐、イナサ。聞いたことがあるような…。


「昨年度…つまりお前らの年の推薦入試でトップの成績で合格したにもかかわらず、何故か入学を辞退した男だ」


…あ!思い出した!
私が推薦入試で落ちた後、中学の先生から推薦トップの人が辞退したという話を聞いた。その時に出て来た名前が夜嵐イナサだった。


つまり実力は…轟くん以上かもしれないということ…!







「多いな…!」
「多いね…!」

緑谷くんとお茶子ちゃんが仮免取得者の多さに驚いている。
結構広い会場を埋め尽くす程たくさんいるので、私も思ったより多いなと思った。後少し狭い。
轟くんが私の後ろに立って、人にぶつからないように配慮してくれているのに気付いて顔を赤くする。


「ん、狭いか?みょうじ」
「だ、大丈夫!」


身体を縮こまらせていた私に気付いた轟くんが、私の顔を覗き込む。
端正な顔立ちが近付いてくるので気恥ずかしくなって慌てて視線を逸らす。

その様子を隣で見ていたお茶子ちゃんがにまにまと笑うので目だけで合図するとごめんねと言いたそうにへらりと笑われた。


『えー…ではアレ、仮免のヤツをやります。あー…僕、ヒーロー公安委員会の目良です。ずばりこの場にいる受験者1500人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます』


勝ち抜け…!
なるほど、ふるい落とすためか…。


『試されるはスピード!条件達成者先着100名を通過とします』


え…100名…?
1500人いるんだよね…?
これでは合格者数5割切るどころの話じゃないような…。

周りもざわざわとし出す。



『で、その条件というのがこれです』


目良さんがボールと輪っかのようなものを取り出す。


『受験者はこのターゲットを3つ身体の好きな場所、ただし常に晒されている場所に取り付けてください。足裏や脇はダメです。そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールが当たった場所にのみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落とします。3つ目のターゲットにボールを当てた人が"倒した"こととします。そして二人倒した者から勝ち抜きです。ルールは以上』


うーん、なるほど。
簡単ではなさそうだ…さてどうしたものか。
私の個性だとどう立ち回るのが良いのか。


『えー…じゃあ展開後ターゲットとボール渡すんで全員に行き渡ってから1分後スタートとします』


展開…?
と思っていると、天井と壁が開いて文字通り展開し、たちまち試験会場と化した。
すごい大掛かりだな…!



75 THE試験
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