目を瞑る。
真っ暗な世界。
聞こえるのは外で鳴いている虫の声とたまに通り過ぎる車のタイヤの擦れる音。
昼はまだ動いていると汗ばむけれど、この時間は少し肌寒い。
なんとなく寝付けず、枕元の間接照明を着ける。
(今、轟くん何してるかなあ…)
思い浮かぶのは、片思いをしている相手の無表情な顔。
きっと寝ているだろうな、なんて思いながら昼のことを思い出す。
▽
「みょうじ」
戦闘訓練を終えたばかりの轟くんが、汗一つかいていないような涼しげな表情で近寄ってきた。
「轟くん。どうしたの?」
「さっきの…わりぃ、巻き込んで怪我とかしてねぇか?」
気まずそうに視線を少しずらしながら彼は言う。
戦闘訓練で同じグループで戦っていた私は、彼の氷結の個性に少し巻き込まれる形で勝利したのだった。
「あ…さっきの…大丈夫、氷が少しかすっただけで何ともないよ」
彼はそうか、と私の顔を見ると、途端に心配そうな顔になる。
そしてそっ、とわたしの左頬に手を添えた。
轟くんの右側で触れられるとひやりとした。
と、同時に触れられた所からぶわっと熱を帯びる。
「えっ、なっ…と、とどろきくっ…?」
咄嗟のことで言葉が上手く出てこず吃ってしまう。
「これ、さっきかすったとこじゃねぇか?」
「えっ…あっ」
その箇所に触れると、微かに指に血がついた。
「これくらい平気だよ」
「けど」
「大丈夫大丈夫!」
そういう私の手を引いて、轟くんは半ば無理やり私を保健室へ連れて行く。
▽
そこまで思い出した時、頭が沸騰しそうなくらい熱くなった。
彼に触れらた頬と手首の感触が…まだ、生々しく残っている。
ああ、何でこんな時間にまた思い出してしまうのだろう
熱を帯びてなかなか忘れられそうにない記憶。
ふと窓の外を見る。まだまだ夜は明けそうにない。
熱を帯びた感触