夜、喉が渇き台所に向かって水を飲み、自室へ戻る途中。

みょうじが泊まっている部屋からぐす、と鼻をすする音と小さな嗚咽が聞こえた。

胸がざわついて、歩く足が止まった。


「… みょうじ?」


襖の向こうに声をかける。
一瞬音がしなくなって、間が空いてから、轟くん、と少しざらついた俺の名前を呼ぶ声。


「…開けていいか?」
「うん…」

みょうじの返事を待ってから、ゆっくりと襖を開ける。
目元を真っ赤にしたみょうじが、蹲るように体育座りをして部屋の端っこに居た。


「どうかしたか?」
「ごめんね…うるさかったよね」
「そんなことないが…何で泣いてる?何かあったのか」


腹でも痛いのか、と言おうとしたのをぐっと飲み込んだ。
そんなことで泣いてるわけがない。


「…オールマイトが…」
「オールマイト…?」


こく、と小さく頷く。
そしてぎゅっと更に身体を縮こめてみょうじは辛そうな声で小さく叫ぶ。


「オールマイトが引退してしまったのは私のせいなんじゃないかって、不安になって…」
「…」
「あの時私は、爆豪くんを一人にしちゃいけないと思ってについて行ったけど…結果的に私はただただ邪魔をしただけだった…爆豪くん一人だったらすぐに逃げ出せたんじゃないかとか、色々考えてたら…」


みょうじが全ての言葉を言い終わる前に、ヒーローを目指しているには華奢な身体を抱き寄せた。
みょうじは驚いて身体を固くさせる。


「と、轟くん…っ」
「みょうじのせいじゃねえ。みょうじは何も悪くないし、オールマイトの引退だってみょうじとは何の関係もない」
「でも…でも…っ」


みょうじの手が、躊躇いがちに俺の背中に回された。
震えていて弱々しく、熱い手だった。


「むしろ俺は、みょうじがすげぇと思った。誰かの為に一緒に危険な場所に飛び込むのは中々出来ることじゃねぇだろ」
「わたし、は…」
「みょうじはヒーローだな」


頭を撫でてやる。
さっきまで強張っていた身体の力が抜ける。
そして、また小さく嗚咽が漏れて、俺の胸元がじんわりとみょうじの涙で濡れていく。


その日はみょうじが泣き疲れて眠るまで、ずっとそして頭を撫で続けた。



私のせい
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