「俺は雄英高教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出することを提案する」
飯田くんが皆にそう言うと、百ちゃんもヒーロー免許もないのに敵と戦うわけには、と賛同する。
私は、まだ迷っていた。
「なら脱出して外のヒーローに!」
「脱出は困難だと思う…ここは敵犯罪者を収容するタルタロスと同じレベルの防災設計で建てられているから…」
上鳴くんの提案を、メリッサさんが難しそうな顔をしながら言う。
さすがI・アイランド。
そりゃ防犯対策バッチリだよね。
「じゃ…助けが来るまで待つしか…」
「上鳴それでいいわけ?助けに行こうとか思わないの?」
「響香ちゃん…」
「おいおい!オールマイトまで敵に捕まってるんだぞ!?オイラたちだけで助けに行くなんて無理すぎだっての!」
確かに、オールマイトまで捕まってる。
普通に考えたら勝ち目なんて無いと思う。
けど、だからこそ…
オールマイトが動けないなら、他に誰が動ける…?
「俺らはヒーローを目指してる」
「ですから、私たちはまだヒーロー活動を…」
「だからって何もしないでいいのか?」
轟くんが、自分の掌を見つめ、握りしめる。
「私たちしか、動けないよ!」
私がそういうと、緑谷くんが大きく頷いた。
「助けたい…。助けに行きたい。みょうじさんの言う通り、僕たちしか動けないと思う」
その言葉に慌てて反対したのは峰田くんだった。
「敵と戦うつもりか!?USJでのこと懲りてねーのかよ!緑谷ぁ!」
「違うよ峰田くん!僕は考えてるんだ。戦わずにみんなを…オールマイトたちを助ける方法を…!」
「気持ちはわかるけどそんな都合のいいこと…」
「それでも探したいんだ!今の僕たちにできる最善の方法を探してみんなを助けに行きたい!」
私は大きく頷く。
「そうだよ、一番いい方法探そうよ!みんなで!やる前から諦めちゃダメだよ!」
「みょうじさん…」
話を聞いていたメリッサさんが、真剣な面持ちで緑谷くんを見つめた。
「I・アイランドの警備システムはこのタワーの最上階にあるわ。敵が警備システムを掌握してるなら認証プロテクトやパスワードを解除されているはず。私たちにはシステムの再変更ができる。最上階まで行くことができれば…助けられるかもしれない!」
メリッサさん…!
メリッサさんは有名な技術者の娘さんで、本人もとても優秀なのだ。
彼女さえいれば、何とかなるかもしれない…!
「監視を逃れるってどうやって?」
「現時点で私たちに実害はないわ。敵たちは警備システムの扱いに慣れて無いと思う!」
「戦いを回避してシステムを元に戻す、か」
「それならいけんじゃねー!?」
「いけるいけるー!」
私たちにできる最善策だ。
しかし最上階には、敵が待ち構えているはず。
「戦う必要はないんだ!システムを元に戻せば人質やオールマイトたちが解放される。そうなれば状況は一気に逆転するはず!!」
「デクくん!行こう!」
ずっと静かだったお茶子ちゃんが、元気に緑谷くんに賛同する。
「私たちにできることがあるのに何もしないでいるのは嫌!そんなのヒーローになるならない以前の問題だと思う!」
「お茶子ちゃんいいこと言う!私も行くよ、緑谷くん!」
「麗日さん… みょうじさん!」
そして轟くん、響香ちゃんも行くと言ってくれた。
「これ以上無理だと判断したら引き返す…この条件が飲めるなら俺も行こう!」
「そういうことであれば私も!」
「よっしゃ俺も!」
飯田くんにつられて百ちゃん、上鳴くんも名乗りを上げる。
それを見ていた峰田くんが分かったよ行けばいいんだろ行けばー!と泣きながら叫ぶ。怖いのに偉いなと笑ってしまう。
そして私たちは、警備システムを唯一変更できるメリッサさんと共に、最上階を目指して登り出した。
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4話