皆で周りませんか、という申し出に、轟くんはみょうじと周る約束してるからと断った。


私は皆で周っても良かったのだけれど、轟くんが断ってしまった手前言いづらくて、お茶子ちゃんや百ちゃんや響香ちゃんのニヤニヤした生暖かい視線と「楽しそうだね」と言う冷やかしの言葉を顔を赤くして否定した。


18時30分にセントラルタワーの7番ロビーに集合、と飯田くんからメールがあって、私と轟くんは時間に間に合うように少し余裕を持って早めに着替える為に一旦別れた。



白と水色を基調としたシンプルなドレス。
白のヒール。

「…変じゃないかな?」

コンコン、とノックの音がしてはーいと言うと百ちゃんたちが様子を見に来てくれた。


「わあ!皆可愛い!似合ってるよ!!」
「ウチこういう格好は…」


照れてる響香ちゃん、かぁいい。


「なまえさんも似合ってますわ!…そうですわ、少し髪を弄らせていただけません?」
「え、う、うん」


百ちゃんが私の髪を優しく触って、ちょこっとアレンジを加えて個性で白いリボンの髪飾りを作り出して付けてくれた。


「八百万さんすごいねえ!なまえちゃんめっちゃ可愛くなったよ!」
「あ、ありがとう…」


照れる。


「これはあれだね、早く轟に見せないと」
「そうですわね」
「だね」


皆が、ニヤニヤ顔で言う。


「も、もう!皆でからかって!!」


ぷんぷんと怒るとお茶子ちゃんがごめんごめんと宥めてくれる。


「先に行ってください、私は耳郎さんの髪を弄ってから行きますわ」
「ゲ!?まだやるの!?」
「当たり前ですわ。せっかくいい素材ですのに生かさない手はありません」


百ちゃん、変なスイッチ入ってない…?
とりあえず皆のお言葉に甘えて、先に7番ロビーへと向かった。


エレベーターを降りると、もう轟くんは待っていた。
飯田くんと上鳴くん、峰田くんも。


「お待たせ、轟くん」


すぐに轟くんに駆け寄る。
轟くんは白いスーツに赤いネクタイだ。
うわ、格好良い。


「…」


轟くんが、私のことを上から下まで眺める。


「…も、もしかして変?」
「いや…似合ってる。上手い言葉が出てこなかった」
「あはは」


後ろで上鳴くんと峰田くんが私を見ながらうおお!と叫んでいる。
轟くんは何故かさり気なく二人から私を遠ざけた。


その後すぐに百ちゃんたちもやって来たが、爆豪くんと切島くんは現れず連絡もつかないらしい。


全く、と飯田くんが不満そうにしていると放送がかかる。
最初は誰も気にしていなかったが、爆発物が仕掛けられたという内容に皆が息を呑んだのがわかった。

そして次々に窓のシャッターが降りていく。

皆の表情が強張って行く。







「携帯は圏外だな」
「エレベーターも反応ないよ!」


マジかよおと峰田くんが不安そうにする。
私のスマホももちろん圏外だ。


「爆発物が設置されただけで、警備システムが厳戒モードに入るなんて…」


メリッサさんが何か考え込むように呟く。
確かに、何だか引っかかるような。


メリッサさんの様子を見ていた緑谷くんが、飯田くんにパーティ会場に行こうと提案する。


「会場にはオールマイトが来てるんだ」


オールマイトが来ている、というだけで皆少し不安が和らぐ。
さすが平和の象徴だ。私も少しほっとした。


「メリッサさん、どうにかパーティ会場まで行けませんか?」
「非常階段を使えば会場の近くに行けると思うけど…」
「案内お願いします!」


私たちは非常階段を使い、パーティ会場の少し上に到着した。
会場を見下ろすと、プロヒーローはもちろんオールマイトまで拘束され、敵が占拠しているのが見えて私たちは絶句した。



緑谷くんがオールマイトに合図し、響香ちゃんがイヤフォンジャックでオールマイトに状況を聞き出す。



警備システムを掌握し、この島の人たち全員を人質に取られたらしい。



3話
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