ズド、とオールマイトの攻撃が地面を抉り、その風圧で私と爆豪くんが吹き飛ばされた。
「5年前と同じ過ちは犯さん!オール・フォー・ワン!爆豪少年とみょうじ少女は取り返す!!そして今度こそ貴様を刑務所へブチ込む!!貴様の操る敵連合共々!!」
「それは…やることが多くて大変だな、お互いに」
男の腕をオールマイトに向ける。
するとその腕がぼこりと盛り上がり、物凄い衝撃波を打ち出した。
その衝撃は建物ごと吹き飛ばし、オールマイトがその攻撃をくらったかのように見えて私は目を見開いて動くことができなかった。
「オールマイトぉ!!!」
爆豪くんが叫ぶ。
それに対して謎の男がククと笑った。
「心配しなくてもあの程度じゃ死なないよ…だから逃げろ弔、その子たちを連れて」
ぺきぺき、と指を伸ばす。
そして黒霧にズドっとその指を突き刺した。
「黒霧、皆を逃すんだ」
「ちょ!あなた、彼は気絶してんのよ!?よくわかんないけどワープ使えるならあなたが逃して頂戴よ」
「僕のはまだ出来立てでね…マグネ。転送距離は酷く短い上…彼の座標移動と違い、僕の元へ持ってくるか僕の元から送り出すかしか出来ないんだ。ついでになじみ深い人物でないと機能しない」
黒霧の個性を強制発動させ、私たちは黒い霧がぶわっと発生する。
つまり、私と爆豪くん連れてこの霧の中に飛び込めということか…。
敵連合からしてもこれは緊急事態。無理やりにでも爆豪くんを連れて行く気だ。
敵連合が私たちを狙って攻撃を仕掛けてくる。
「爆豪くんは連れて行かせない!」
私がガラスのナイフを作り出して投げると、苦戦した様子でその攻撃を交わす。
その間に今度は棒を作り出して攻撃を仕掛ける。
爆豪くんはまた玉にされないために仮面の人に爆破をして応戦。
考えろ、6対2。
圧倒的に不利。
しかし私が囮りになれば爆豪くんだけでも逃してあげることは出来なくない…!
ガラスのナイフを投げ、攻撃はガラスの盾でかわす。
爆破をし、距離を取って来た爆豪くんと背中合わせになる。
「爆豪くん、君だけでも逃げて…この人たちの狙いは爆豪くんだから…」
「みょうじ」
ふいに呼ばれた名前に、ハッとして顔を上げる。
「馬鹿なこと言ってんじゃねえ。切り抜けるぞ。二人で」
「…っ!うん!」
初めて、名前を呼んでくれた。
驚きと嬉しさを噛みしめながら、ガラスの棒を形成し構える。
その時だった。
アスファルトの砕ける音、パキパキと氷が張る音がした。
そしてぶん、と頭上に"何か"が飛んだ。
そこに居た全員、突然のことに驚きながら見上げる。
…緑谷くんと飯田くん、切島くんだった。
なるほど、壁を砕いて飛び出して、轟くんの氷で道を作り緑谷くんと飯田くんの個性で飛んだのか。
私は一瞬で理解すると、爆豪くんを見る。
爆豪くんも驚いて目を見開いていた。
「来い!!!」
切島くんが叫んで手を伸ばす。
それに爆豪くんがにやと笑って、私の腰に手を回す。
「えっ?え、ひゃあっ!!」
爆豪くんが爆破で空を飛んだ。
私は爆豪くんに抱えられながら空飛ぶ浮遊感。
がし、と爆豪くんが切島くんの手を掴んだ。
「…バカかよ」
嬉しそうな顔をしながら悪態をつく。
素直じゃないんだから、と思いながらも私はニヤニヤと爆豪くんを見上げた。
「何笑ってんだ落とすぞコラ」
私の視線に気が付いた爆豪くんが私を掴む手を緩めようとするので、私は慌てて彼に抱きついた。
「あぶな!死ぬって!この高さから落とされたら!!」
「ハッ」
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