「ここで終わりだ、死柄木弔!!」

オールマイトが死柄木を追い詰める。
依然として敵たちはシンリンカムイの個性によって捕縛されている。


「終わりだと…?ふざけるな…始まったばかりだ…正義だの、平和だの…あやふやなもんでフタされたこの掃き溜めをブッ壊す…!その為にオールマイトを取り除く…」


爆豪くんがじり、と私を背にして身構えた。
こんな状況になってもまだ足掻こうとしているように見える死柄木は、何か奥の手でも隠し持ってるんじゃないかと思える。


「仲間も集まり始めた…ふざけるな…ここからなんだよ……黒ぎっ」


彼が黒霧の名を呼ぶ前に、黒霧からウッと声が漏れ、かくんと身体の力が抜けたように見えた。


「キャァァア!やだぁもお!見えなかったわ!何!?殺したの!?」
「中を少々いじり気絶させた。死にはしない」


忍法千枚通し!と言うプロヒーローエッジショット。身体を薄く細く出来るらしい。それにしてもどうやったのだろうと疑問に思う。


「さっき言ったろ、大人しくしてたほうが身の為だって。引石健磁、迫圧紘、伊口秀一、渡我被身子、分倍河原仁。もう逃げ場ねえってことよ。なぁ死柄木聞きてえんだが…おまえさんのボスはどこにいる?」


現場には沢山の警察も来て完全に包囲されている。
私は油断しだしていた。
オールマイトもいるし、敵は縛られ動けない。


「ふざけるな…こんな…こんなァ…こんなあっけなく…ふざけるな…失せろ…消えろ…」

半分混乱している死柄木が、うわ言のように呟き続ける。


「奴は今どこにいる、死柄木!」


オールマイトがそう聞いた瞬間だった。


「お前が!嫌いだ!!」


死柄木の後ろからどろっとした黒い泥のようなものが出現し、その泥の中から突如として脳無が現れた。


「脳無!?何もない所から…!あの黒い液体は何だ!?」
「エッジショット、黒霧はー…」
「気絶している!こいつの仕業ではないぞ!」


な、なに…と思っていると黒い泥のような液体が私を包みこんだ。


「んぐっ!?」


やだ、やだやだ!入ってくんの!?気持ち悪っ!無理無理無理なんですけど!?

横を見ると爆豪くんも同じように黒い液体に飲まれかけていた。


爆豪くんに手を伸ばす。
その前に私の視界は真っ暗になり、音も、立ってる感覚すらなくなった。






バシャ!と泥水のようなものが跳ねる音。


「うっ、げほっ、げほっ!!」
「ゲッホ!!くっせぇぇ…なんじゃこりゃあ…」
「爆豪くん!大丈…っ!!」


爆豪くんの声に反応して振り向いた時。
死ぬ、そう肌で感じる程の謎の威圧感に押し潰されそうになった。

声を出し動くことすら憚られる程の、圧迫感。
心臓がどくんどくんと嫌な音を立てる。


「悪いね爆豪くん」
「あ!?」


爆豪くんも気付いたらしく一瞬びくりと身体を揺らした。
瞬間。
後ろからバシャバシャと液体の跳ねる音が聞こえて来て敵連合達が現れた。


「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間を取り返した、この子たちもね…君が大切な"コマ"だと考え判断したからだ。いくらでもやり直せ。その為に僕はいるんだよ。全ては君の為にある」


威圧感を放ち続ける人が死柄木にそう言う。
ゾ…と鳥肌が立つのを感じるのと同時に、爆豪くんに腕を引かれた。思わずよろけて彼の腕に掴まる。


「やはり来てるな」


謎の人がそう呟くと、空から跳躍して来たオールマイトが目に映った。


「全て返してもらうぞ!!オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すか、オールマイト」



64 オール・フォー・ワン
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