爆豪を守りながら森を抜けると、麗日と蛙吹と合流した。
爆豪を護衛しているというと、どこにいるの?と聞かれ振り向くとみょうじと常闇も居なくなっていた。

心臓がどくんと嫌な音を立てた。


…また、まただ。


気がつくと俺はあいつを守れない。
敵の個性でみょうじは爆豪と常闇と共に丸い玉にされ奪われた。
そして、取り返せそうだった寸前で手が届かなかった。


みょうじは爆豪にくっついて離すまいとしながら俺に気がつくとその瞳に僅かな希望の光を灯した。俺はみょうじの名前を叫んで手を伸ばす。
みょうじも轟くん、と俺の名前を呼んで手を伸ばした。


数センチ。

俺があと少しでも早く動けていたら。
みょうじの手を掴むことが出来たはずなのに…。


「…轟、大丈夫か?」


緑谷の見舞いに来ていた切島が俺の顔を覗き込んでいた。


「あ、ああ…悪い」
「寝てねえのか…」
「ん…まあ…ちょっとな、」


歯切れの悪い俺に、切島が悔しそうに視線を落とした。


「目の前でみょうじ拐われたんだってな…悔しいよな…」
「…っ、」


みょうじは俺に助けを求める目をしてた。
俺はその手を握ってやらなかった。
くそ。
自分の無力さに呆れる。


「轟、さっき八百万がオールマイトと話してただろ…発信機がどうって」
「ああ、敵の一人に取り付けたって言ってたな」
「…行こうぜ、助けに。明日だ。緑谷が目ェ覚めてたら緑谷も誘う」


切島の言葉に顔を上げた。

みょうじを、助けたい。
自分は逃げられる場所にいたくせに爆豪にくっついていった馬鹿なただのクラスメイトを、助けたい。


いや、違うな。


「俺も行く」
「じゃ、八百万に話しつけに行こうぜ!」
「ああ」



好きな女を、助けたい。
ただそれだけだ。
それが褒められた行為じゃないと分かっていても、誰に咎められようとも。


好きな女のために行動したいのだ。



62 後悔
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