施設を目指し、狙われている爆豪くんを少しでも早く安全な場所に送り届ける為、私たちは爆豪くんを囲むように歩いていた。
私は爆豪くんのすぐ後ろで周りを警戒しながら歩いていた。


…はずだった。


一瞬にして、暗転。



気がつくと私は何もない丸い球体のような場所に閉じ込められていた。
何だここは。
どういうことだ?爆豪くんは?他の皆は?


パニックになりそうなのを必死で抑える。


敵の個性に捕まったと考えるのが妥当だ。
自分はどうなるんだろう?爆豪くんも捕まってしまったのだろうか?


少し不安に思いながら球体に触れてみる。
あまり感触はなかった。


パチン!と音がして空間が弾けた。
目の前には、緑谷くんや轟くん、障子くんが居た。
同じくして捕まっていたらしい爆豪くんと常闇くんが私と同じようにパッと弾け出て来る。



「問題なし」


私のすぐ後ろで敵の声が聞こえた。
そしてUSJの時に現れた黒い霧の敵がすぐ近くで爆豪くんを連れて行こうとしているのが見えて、咄嗟に彼の腕を掴んだ。


「爆豪くんを連れて行かないで!!」


爆豪くんがギョッとして手を振り払おうとするが私は思い切り抱きついて離さない。


「みょうじ!!」


轟くんが私の名前を呼び、手を差し出しているのが見えた。
私も手を伸ばすが届かない。


「かっちゃん…!」
「来んな…デク」


そのまま私たち二人は黒い霧に包まれた。







「なぁんかオマケついて来ちゃったけど…まぁいいや。早速だが…ヒーロー志望爆豪勝己くん、俺の仲間にならないか?」


雑居ビルらしき場所の、小汚い一室。
私と爆豪くんは椅子に座らされ体と手を拘束されていた。


「寝言は寝て死ね」


ぷはっと思わず笑ってしまった。
寝言は寝て死ね!?
言わせてもくれないんだ!

こんな状況なので余計におかしくて一人笑っていると敵たちにドン引きの眼差しで見られていた。


「爆豪くんを勧誘とか馬鹿すぎるでしょ。貴方達彼の何を見て勧誘したの?敵っぽい顔つき?言動?あさはかだなぁ…。誰よりも真面目にヒーロー目指してる男の子一人見抜けないとか勧誘活動向いてないよ。辞めたら?」

ふふ、と笑う。

「…。お前は要らないから殺してもいいんだぞ、みょうじなまえ」
「嬉しい言葉ですね。欲しいとか言われたくないもんね、爆豪くんみたいに!」
「んだとこら!!」


まあまあ、と死柄木が低い声で笑う。


「体育祭見たよ。結構実力あるじゃん。別に入りたいなら入れてあげてもいいしさあ」
「…」


入りたくないんだけど…。
ちら、と爆豪くんを見ると彼は私を真っ直ぐ心情の取れない表情で見つめていた。
私が軽く首を傾げると、ふいと視線を逸らされてしまった。



ふいにテレビがつけられて、その内容に私たちは顔を上げた。
校長先生と相澤先生、ブラドキング先生が謝罪会見をしていた。



「何故ヒーローが責められてる!?奴らは少ーし対応がズレてただけだ!誰にだってミスの一つや二つある!現代ヒーローってのは堅苦しいなあ爆豪くんよ!」


それからトカゲっぽいやつがステインのご教授がどうとか長ったらしい話をしていたが興味がないので聞いていなかった。
かちゃかちゃと手の拘束がどうなってんのか動かしたり眺めたりしていた。


「荼毘、拘束具外せ」
「は?」


私も爆豪くんも顔を上げた。
敵ながら何言ってんだこいつ?と思ってのことだ。


「暴れるぞこいつ」
「いいんだよ、対等に扱わなきゃスカウトだもの。それに、この状況で勝てるかどうか分からないような奴らじゃないだろ?雄英生」


…。


「トゥワイス外せ」
「はァ俺!?嫌だし!」


そう言いながらめちゃくちゃ従順に爆豪くんの拘束具を外す。
外すんかい、と心の中でツッコミを入れてしまった。


「強引な手段だったのは謝るよ…けどな、我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむだけの暴徒じゃねぇのをわかってくれ。君を拐ったのは偶々じゃねぇ」


かちゃん、と爆豪くんの拘束具が外された。
トゥワイスと呼ばれた人がこっちも?と私を指差して死柄木がああと頷き、私の拘束具にも手をかける。


「ここにいる者事情は違えど人に、ルールに、ヒーローに縛られ…苦しんだ。君ならそれをー…」


ボム!と爆発音が響いた。
爆豪くんが死柄木の顔面を爆破したのだ。

私の手の拘束具は外されないまま、椅子からの拘束のみ解かれて爆豪くんが私を自分の後ろに追いやる。
せめて私の拘束解けてからにして…爆豪くん。


「黙って聞いてりゃダラッダラよぉ…馬鹿は要約出来ねえから話が長え!要は"嫌がらせしてぇから仲間になって下さい"だろ!?無駄だよ…」


私はさっき爆豪くんの拘束具を外した鍵を思い出す。
そしてガラスで鍵を作り出すと自分で何とか拘束具を外す。
かちゃんとそれを床に落とすと敵がぎょっとして見つめていた。


「俺はオールマイトが勝つ姿に憧れた。誰が何言って来ようがそこはもう曲がらねえ!」



61 嵐の前
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