常闇くんのダークシャドウが暴れ回っている。
私と緑谷くんを抱えた障子くんは物陰に隠れてその様子を見ながら話す。


「動くモノや音に反応し、無差別攻撃を繰り出すだけのモンスターと化してる」
「これは…こんな個性だったとは」


攻撃を避けながらどうしたものかと考える。
常闇くんは「俺のことはいいから他と合流しろ」と言うが、この状態の常闇くんを置いていくなんて…私には考えられなかった。かと言って敵の目的である爆豪くんの安否も気になる。


常闇くんのダークシャドウを抑えるには、光…つまり施設か火事の場所まで連れていく必要がある。


「緑谷、みょうじ。俺はどんな状況下であろうと苦しむ友を捨て置く人間になりたくはない。緑谷、お前は爆豪が心配でその体を押してきたのだろう。…まだ動けると言うのなら俺がダークシャドウを引きつけ道を拓こう」


常闇くんに位置がバレないよう小声で話すが攻撃が飛んでくる。
私たちはまたかわして木陰に隠れる。


「待ってよ施設も火事も距離がある。そんなの障子くんが危な…」


また攻撃、かわしながら話を進めていく。


「そうだよ、危険だよ障子くん。もしそれで行くなら私も残る」
「わかってる、助けるという行為にはリスクが伴う。だからこそヒーローと呼ばれる。このまま俺と共に常闇を助けるか、爆豪の元へ駆けつけるか…お前はどちらだ?緑谷……」


その言葉に、緑谷くんが何か覚悟したように瞳に光が宿る。
私は、あ、何か閃いたんだなと理解した。


「ごめん、障子くん……!」







私たちは走っていた。
もちろん、緑谷くんは障子くんに抱えられたまま。
緑谷くんが作戦を立ててくれて、私たちはそれに従った。
複製腕を複製して囮りにし、本体に攻撃が行かないように誘導しつつ、爆豪くんを目指す。
爆豪くんの爆破なら常闇くんを抑えられるというのだ。


…そして私たちの目的の場所が見える。


「あそこ!氷が見えるよ障子くん!」
「ああ」
「交戦中…!?」


希望が見えてきたことに安堵していると、後ろからダークシャドウの攻撃が襲いかかってくる。
私は慌てて横に飛び退いて回避する。
地面が抉れるほどのすごい破壊力。
思わずゾッとした。



「爆豪!轟!どちらか頼む!光を…」


ずしゃ、とダークシャドウが敵を潰した。


「障子、緑谷、みょうじ…と、常闇!?」


交戦していたらしい轟くんと爆豪くんが驚いた様子でダークシャドウを見上げる。


「早く光を!!常闇が暴走した!」


私と障子くんに攻撃が降ってくる。
かわした先に轟くんが氷壁を作ってくれた。


「見境なしか…っし、炎を…」
「待てアホ」


炎を出して暴走を止めようとする轟くんを、爆豪くんがニヤと笑って止める。


「見てえ」


肉、肉〜と謎の言葉を吐きながら口から歯?を伸ばして攻撃してる敵にズオッとダークシャドウの牙が剥く。


「強請ルナ、三下」


ダークシャドウの声と共に、ガッ!ガガガと凄まじい音がして、森が抉れ、木々が吹き飛んだ。

そして敵がやられ、爆豪くんと轟くんが走り出して二人がかりで爆破と炎の光によって常闇くんのダークシャドウが抑えられた。


「!」


がくん、と常闇くんが膝をつく。
それにしても凄まじかった。


「てめェと俺の相性が残念だぜ…」
「…?すまん助かった…」


轟くんが、私に近寄ってきて大丈夫かと心配してくれた。私は笑顔で大きく頷く。


「それにしても俺らが防戦一方だった相手を一瞬で…」
「いやあ、凄かったよ本当に…」


何しろ攻撃かすりそうで怖かったので…。


「常闇大丈夫か」
「障子…悪かった、緑谷とみょうじも…俺の心が未熟だった」
「そんな、常闇くんは何も悪くないよ、謝らないで。立てる?」


ああ、と常闇くんは自分で立ち上がった。


「複製の腕がトバされた瞬間怒りに任せダークシャドウを解き放ってしまった。闇の深さ…そして俺の怒りが影響され奴の凶暴性に拍車をかけた。…結果収容も出来ぬ程に増長し障子を傷つけてしまった…」


反省する常闇くんに何と声をかけて良いか分からず、黙って見守った。


「そうだ…!敵の目的の一つがかっちゃんだって判明したんだ!」
「爆豪…?命を狙われているのか?何故…」
「わからない…とにかくブラドキング・相澤先生プロの二名がいる施設が最も安全だと思うんだ」
「私もそう思う。それにあそこには他にも補習組と避難した人たちもいるから一番安全だよ!」
「なる程、これより我々の任は爆豪を送り届けること…か!」


話を爆豪くん抜きで進めていく。
爆豪くんはきょろきょろと半ば呆然としながらそのやり取りを見ていた。


「ただ広場は依然プッシーキャッツが交戦中。道なりに戻るのは敵の目につくしタイムロスだ。真っ直ぐ最短が良い」
「敵の数わかんねえぞ。突然出会す可能性がある」
「確かに…また交戦になるのは出来るだけ避けたい。敵の個性もよくわかってないし…」


緑谷くん、轟くん私が意見を出し合う。
障子くんと常闇くんもふむと耳を傾ける。


「障子くんの索敵能力がある!そして轟くんの氷結にみょうじさんのガラス…!更に常闇くんさえ良いなら、防御手段を備えた無敵のダークシャドウ…!」


なるほど、さすが緑谷くんだ。
いつも思うけど彼には策を練る能力が高い。
私は考えなしに動いてしまうタイプなので羨ましい。


「このメンツなら正直…オールマイトだって怖くないんじゃないかな…!」



60 ブチ込む鉄剣!
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