合宿三日目…
本当にきつかった。
昨日はとにかく大きいガラスを作り続けたが、今日はとにかく強度!
強度の高いガラスを作り続ける。
簡単そうに思えるがかなり集中力と体力を要する。
おかげで私はへろへろになりながら夕食作りをしていた。
「…大丈夫か、みょうじ」
「とど、ろきくん…うん、大丈夫だよ…」
へろへろと鍋を持ちながら移動する。
それを見た轟くんは少し眉を顰めて、私から鍋を奪った。
「危ねェ。俺が持つ」
「へっ!?だ、大丈夫だよ…」
いいから、と制されてしまった。
みんなも疲れてるのに私だけ休んでいるわけにはいかない。
轟くんの手をわずらわせてしまったことに少し罪悪感を覚えた。
途中で、緑谷くんがかまどに薪を並べているのが見えて、轟くんが近寄って行った。
「オールマイトに何か用でもあったのか?相澤先生に聞いてたろ」
何の事かわからず私は首を傾げた。
「ああ…っと、うん、洸汰くんのことで…」
「洸汰?誰だ?」
「「ええっ!?」」
緑谷くんと二人であの子だよと説明する。
轟くんはああ…と思い出したかのように頷いた。
「その子がさ…ヒーロー…いや個性ありきの超人社会そのものを嫌ってて、僕は何もその子の為になるような事言えなくてさ。オールマイトなら…何て返したんだろうって思って…」
緑谷くんは本当に良い子だ。
普通はスルーしてしまいがちなことをしっかり見て考えられる。なかなか出来ることじゃないと思った。
「轟くんとみょうじさんならなんて言う?」
難しい質問だな、何で答えようかと思っていると同じく少し考えていた轟くんが口を開く。
「………場合にによる」
「っ…そりゃ場合によるけど…っ!」
「あははっ!」
思わず笑ってしまった。
私もこの癖直さないとな…。
「素性もわかんねぇ通りすがりに正論吐かれても煩わしいだけだろ。言葉単体で動くようならそれだけの重さだったってだけで…大事なのは何をした、何をしてる人間に言われるか…だ。言葉には常に行動が伴う……と思う」
緑谷くんがハッとして顔を上げた。
「…そうだね確かに…通りすがりが何言ってんだって感じだ。… みょうじさんはどう思う?」
轟くんが百点満点の答えを出した後で言うのも何だなあと思いながら何となく自分の考えを少しずつ言葉にする。
「私は、何も言わないかもしれないなあ。超人社会を嫌っているのもその子の個性…というか性格だと思う。けど、超人社会を嫌ってるのにはきっと何か理由があるんだよね。…もしそれを知ったなら…私に出来ることは話を聞いてあげることだけ…私に出来ることなんてそれくらいかなあ」
緑谷くんが薪に視線を戻してそっか、と呟いた。
「お前がそいつをどうしてえのか知らねえけど、デリケートな話にあんまズケズケ首突っ込むのもアレだぞ。そういうの気にせずぶっ壊してくるからな、お前意外と」
「…なんかすいません…」
▽
「腹も膨れた皿も洗った!お次は…」
「肝を試す時間だー!」
三奈ちゃんが嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。
「その前に大変心苦しいが補習連中は…これから補習だ」
「ウソだろ!!」
先生の捕縛布にぐるぐるに巻かれ補習組は連れて行かれた。
連れて行かれた皆の悲痛な叫び声がいつまでも響いていた。
「はいというわけで脅かす側先行はB組、A組は二人一組で3分おきに出発。ルートの真ん中に名前を書いたお札があるからそれを持って帰ること!」
常闇くんが闇の共演…とさっきから呟くので面白くて説明の内容が中々頭に入ってこなかった。
「脅かす側は直接接触禁止で個性を使った脅かしネタを披露してくるよ」
そして、くじ引きを引く。
1、2、3、4、5、6、7、8組と来て私は緑谷くんとペアになった。
「よろしくね、緑谷くん…!わ、私あんまり驚かされるのとか得意じゃないから…その、思わずくっついちゃったらごめんね!!」
「えっ!?あっ!その、全然ッッ!」
緑谷くんは顔を真っ赤にしてわたわたし出した。
「おい尻尾…代われ…!」
「爆豪くん…轟くんと!?ふ、ふふっ!」
「何笑ってんだガラス女てめェ!!」
その様子を見ていた轟くんが、とことこと緑谷くんに近づいてくじ引きの紙を渡す。
「…緑谷、俺と代わってくれ」
「とっ、轟くんまで!?」
「いや…っていうか緑谷と轟が変わったら爆豪と緑谷がペアだろ…そっちの方が…」
緑谷くんと爆豪くんがペア相手。
うん、やばそうな匂いがぷんぷんだ。
「あははっ!轟くん面白いね!冗談言うんだね」
「…冗談じゃねえ。みょうじと周りてえ」
「えっ」
一瞬真面目な顔するのでどきっとしてしまった。
いやいや、違う違う…。
きっと冗談か何かなんだ。そうそう。
そして12分後
「何この…焦げ臭いの…」
「黒煙…」
ハッと気付いた時には遅かった。
「何で…万全を期したハズじゃあ…!!何で…何で敵がいるんだよ!!」
ピクシーボブが殴られ、地面に倒れた。
なんで、どうして…!?
私は目の前の状況にまだ頭が追い付いて来なくて混乱していた。
← →
56 合宿三日目