「皆…土産話楽しみに…ううっ、してるっ…がら!」


ひっくひっくと泣く三奈ちゃんの背中をさする。


「まっまだわかんないよ!?どんでん返しがあるかもしれないよ…!」
「そっ、そうそう!」
「緑谷、みょうじ!それ口にしたらなくなるパターンだ」
「えっ」


上鳴くんがギエエエエと言いながら緑谷くんに目潰しする。


「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄!そして俺らは実技クリアならず!これでまだわかんねえなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!」
「おっ落ち着いて上鳴くん」
「わかんねえのは俺もさ。峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ。とにかく採点基準が明かされてない以上…」
「同情すんならなんかもう色々くれ!!」

瀬呂くんも不安そうだ。
上鳴くんはヤケになっちゃってる。
何を言ってももう通じなさそうだけど、必死で宥める。


「予鈴が鳴ったら席につけ」


バンと教室のドアが開いて相澤先生が入ってきた。
皆一瞬で席に着く。


「おはよう。今回の期末テストだが…残念ながら赤点が出た。したがって…」

ごくり。
と固唾を飲む。


「林間合宿は全員行きます」


「「「どんでん返しだあ!!!」」」


ほっ、とする。よかった。


「筆記の方はゼロだ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤あと瀬呂が赤点だ」
「行っていいんスか俺らぁ!!」
「今回の試験我々敵側は生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るよう動いた。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」


それは確かにそうだ。
ガラスでハンドカフスを作り出す以外の勝ち方を先生も予想していたのだろう。


「そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」


ただし赤点取った人は別途に補修時間を設けてるらしい。
それを聞いた時の赤点組の表情と言ったら…。
思い出すのはやめておいてあげよう。







「… みょうじ」
「どうしたの、轟くん?」


皆が買い物行こうよ!と話している中で申し訳なさそうに轟くんが声を掛けてくる。


「休日ってもう約束しちまったか」
「いや、まだだよ」
「良かったら…一緒に俺の母親の見舞いに来てくれねえか」


私は首を傾げて、自分を指差す。


「私で…いいの?」
「みょうじじゃねえと。…母親にお前の話したら会いたいって…無理にとは言わねえ。会いづらいよな」
「いいよ!轟くんのお母さん会ったみたいな。きっととても優しい人なんだろうなあ」


私が笑うと、轟くんは目を見開いて本当にいいのかと気まずそうに言う。
私はもう一度大きく頷く。
そうすると轟くんは優しく微笑んで私の頭に手を置いた。


「ありがとな」


心臓が急にどくどくとうるさくなった。
最近轟くんを見てるとこういうことが多い。
私は心臓がこうなると、そわそわどうしたらいいのか分からなくなってしまう。



51 どんでん返し
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