六月最終週…
期末テストまで残すところあと一週間を切っていた。


「全く勉強してねーー!!」
「奇遇だね上鳴くん!私もだよっ!」
「自信満々で言うことじゃねーけどな!体育祭やら職場体験やらで全くしてねー!!」


三奈ちゃんは笑うばかり。
諦め入ってるなちょっと…。


「芦戸さん上鳴くん!が、頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」
緑谷くん 4/21位
「うむ!」
飯田くん 2/21位
「そうそう!」
私 10/21位
「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねえだろ」
轟くん5/21位


「言葉には気を付けろ!!」


上鳴くんは21/21位、三奈ちゃんは20/21位らしい。
心臓を抑えて悲しげに落ち込む上鳴くん。ちょっとかわいそうだ。


「お二人とも座学なら私お力添え出来るかもしれません」
「ヤオモモーー!!」
「お二人じゃないけど…ウチもいいかな?2次関数ちょっと応用つまずいちゃってて…」
「百ちゃん!私も響香ちゃんと同じとここんがらがっちゃって!」
「わりぃ俺も!八百万古文分かる?」
「おれも」


瀬呂くんと尾白くんも加わってくる。


「いいですとも!」


百ちゃんが心底嬉しそうに笑う。


「では週末にでも私の家でお勉強会催しましょう!」
「マジで!?うんヤオモモん家楽しみー!」
「楽しみー!」


すると百ちゃんはプリプリしだして、講堂を開けてもらうとか紅茶はどこを贔屓にしてるかと聞いてきた。


「必ずお力になって見せますわ!」


ああ、百ちゃん可愛いなあ。
みんなでニコニコと百ちゃんのプリプリを楽しむ。


「なんだっけ?いろはす?でいいよ」
「上鳴くんそれお水だよ」
「ハロッズですね!!」







「お邪魔します!」

お休みの日、皆で百ちゃんとお家にお邪魔する。
やはりというべきか百ちゃんのお家はめちゃくちゃ大きくて驚いた。

講堂に案内され、使用人の人が紅茶を淹れてくれた。


「さ、皆さんお勉強を始めましょう!」


最初は皆家の大きさとかその他諸々にビビりまくって中々勉強が捗らない様子だったが、しばらくすると慣れて皆各々苦手教科をしっかり百ちゃんに教わる。


「あらお紅茶が…おかわりいただいてきますわね」


百ちゃんが紅茶を貰いに講堂を出ると、張り詰めていた空気が和らぐ。



「っはーー!それにしてもすげえよなヤオモモの家」

ぐいーと伸びをしながら上鳴くんがため息混じりに言う。

「うん…本当に」

尾白くんも居心地が少し悪そうだ。

それに対して響香ちゃんはくてーっとリラックスしたように椅子の背もたれにもたれかかる。


「広いし空調も快適だしね」
「紅茶も美味しいし!」
「お菓子もすごい美味しいよー!」


三奈ちゃんと笑いながら高級そうなお菓子に手を伸ばす。


「ね、瀬呂くん?」
「ああ…そう、だな…」


あれ、いつもの瀬呂くんらしくない。


「どうしたんだ、瀬呂?奥歯にものが挟まったような顔して」
「いやさ、いきなり八百万のご両親とか来たらどう挨拶しようかなって…変な挨拶したら何かヤバくね?」


挨拶かぁ…特に考えてなかったなあ。


「挨拶なんて普通にすればいいだろ?」
「普通ってどんなんだよ」
「ふっ…こんちあーす!八百万と同じクラスの上鳴電気です!お菓子美味しいでぇーす!きっと食事も美味しいんでしょうねー!今度夕食にも招待してください!」


「「「…」」」


この挨拶だけはやばい、と思った。


「上鳴…それはどうかと…」
「え?ダメ?」
「アホの挨拶ね」
「しかも何気に夕食たかってるしね」
「ありえないよね。こんな友達いると思われたら百ちゃんがかわいそうだよ」
「それはさすがにみょうじ言い過ぎじゃね!?」
「そんなことない!恥ずかしいよ!!」


上鳴くんはぐっ、と言葉に詰まる。


「じゃあどうやって挨拶すんだよ…尾白!手本見せてくれよ!」
「え?俺?何で俺が…」
「このメンバーの中じゃ尾白が一番無害そうだからな!」


無害って…
何気に喧嘩売ってるような。


「いいからやってくれ尾白!ヤオモモに恥かかせたらいけねーだろ?」
「わ、わかったよ…ええっと…じゃあ…んんっ、お父様、お母様、初めまして八百万さんのクラスメイトの尾白猿男と申します。本日はお日柄も良く…」
「丁寧すぎるッ!!!」


三奈ちゃんのツッコミが炸裂する。
私は思わずぷはっと笑い出してしまった。お見合いか!


「おいおいそんな挨拶したら逆玉狙いで八百万に近付いたクソ野郎の烙印押されっぞ!?」
「そ、そんなつもりは…」


堪えきれずに私はあはははと笑い出す。
もうダメ、面白すぎる!!


「おいみょうじ大丈夫かよ笑い死ぬんじゃねえか!?」
「ふっ、くく、だい、じょうぶ…はははっ!!」


上鳴くんが、どうやって挨拶すりゃいんだよ!と頭を抱える。
そこまで考え込まなくても…。


「じゃあ耳郎!お前やってみろよ!」
「え?!ウチ?ウチはいいって…」
「ねえ、皆…そんなに悩まないでさ、どうもお邪魔してます!ヤオモモに勉強教わってます!って普通に言えばいいんじゃない?違う?」


三奈ちゃんの言葉に、皆が声を揃えて「ごもっとも!」と言う。



49 備えろ期末テスト
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