緑谷くんが、お茶子ちゃんからの電話を終え病室に戻ってくる。
みんな心配してたらしく、緑谷くんのスマホは昨日から鳴りっぱなしだった。


「緑谷、飯田今診察終わったとこなんだが」
「…?」
「右手、後遺症が残るそうだ」


緑谷くんの表情が、明らかに変わる。


「両手ボロボロにされたが…特に左のダメージが大きかったらしくてな腕神経叢という箇所をやられたそうだ。…と言っても手指の動かし辛さと多少の痺れくらいなものらしく手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしい」


飯田くんは、自分の行いを悔いていた。
ヒーロー殺しを見つけて何も考えられなくなったこと。
マニュアルさんに告げず単身向かって行ったこと。

そして、ステインは憎いが彼の言葉は事実だったと。


「だから、俺が本当のヒーローになれるまでこの左手は残そうと思う」


そっか、と私が小さく呟く。
私が今の彼に言える言葉など、見つからない。


「飯田くん」


緑谷くんは自分の拳を、飯田くんに向ける。


「僕も…同じだ。一緒に強く…なろうね」


それを見てた轟くんが、何故だか申し訳なさそうにする。


「何か…わりィ…」
「何が…」
「俺が関わると…手がダメになるみてえな…感じに…なってる…呪いか?」


「「「!?」」」


私たちは思わずみんなして目を見開いて、固まった。
そして、堪らず笑い出す。


「あっはははは!何を言ってるんだ!」
「あはは!ひー!おかしい!真面目な顔して呪いかって!!」
「轟くんも冗談言ったりするんだね」
「いや冗談じゃねえ。ハンドクラッシャー的な存在に…」


「「「ハンドクラッシャー!!!」」」


しばらく三人の笑い声は病室に響いて、看護師さんがやって来て怒られるまで続いた。







「短い間でしたがお世話になりました」
「ほんっっとにな!」


まだ怒りの冷めやらぬキリサキジャック様。
申し訳なくなって体を縮こめる。
それを見たキリサキジャックがふはっと笑う。


「プロヒーローって手前叱らなきゃいけねえんだが…ダチのピンチにすぐ駆け付けられる度胸は買ってやるよ。実際俺がお前の立場でもそうしただろうしな。卒業したら俺ンとこ来てもいいぞみょうじ。ナイフのいろはをとことん教え込んでやる」
「…!ありがとうございます、キリサキジャック!!」

職場体験先がここでよかった、と心の底からそう思った。
キリサキジャックは私の頭に手を置いてニッと笑ってくれた。







職場体験終了の翌日…。


「おはよー!」


がらっとドアを開ける。
目の前には、見慣れない男の子。
その男の子を見て大爆笑している切島くんと瀬呂くん。


「アッハッハッハマジか!!マジか爆豪!!」
「笑うな!」
「…え、爆豪くん…なの?」


彼に近付いてまじまじと見つめる。


「わあ、イメチェン!?」
「ちっっっげえわ!!ブッ殺すぞ!!!」
「やってみろよハチニイ坊や!アッハハハハ」


ボム!と怒りで爆発して髪が戻った。どういう仕組み!?
さて爆豪くんの怒りの矛先がこちらに向かないうちに席に行こう。
轟くんの席の周りにはステイン戦での三人が集まっていた。


「轟くん、緑谷くん飯田くんおはよう!」
「ああ、おはよう!」
「おはよ、みょうじさん」
「…はよ」


周りの子たちを見ると皆中々有意義な職場体験を過ごしたらしく、皆少し雰囲気が変わっているように思えた。


「ま、一番変化というか大変だったのは…お前ら四人だな!」


上鳴くんの言葉で私たちに注目が集まる。


「ヒーロー殺し!」「命あって何よりだぜマジでさ」
「エンデヴァーが助けてくれたんだってな!さすがNo.2だぜ!」


その言葉を聞いた轟くんは、少し間を開けてからそうだな、と肯定した。
私たちもこくこくと頷く。



47「ヒーロー殺しステイン」その余波
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